正念場を迎えた-学齢期の、被災地の子どもたちの学び支援-第11回東日本大震災子ども支援意見交換会から 

被災地・政府・国会議員・市民社会が一堂に会し、意見交換

-学齢期の子どもたちの学びを支える-

東京・生活者ネットワークも賛同する、東日本大震災子ども支援ネットワーク「東日本大震災子ども支援意見交換会」(事務局長:森田明美東洋大学教授/代表運営委員:荒牧重人山梨学院大学教授)が、66日、衆議院第一議員会館(多目的ホール)を会場に開催された。

 

第11回となった、東日本大震災子ども支援ネットワーク主催の「東日本大震災子ども支援意見交換会」。6月6日、衆議院第一議員会館で

2011311日、東北・関東一円を襲った東日本大震災は被災地の子どもたちの生活を一変させ、現在もなお子どもたちに多くの困難を強いている。第11回目となる、この日の意見交換会のテーマは、「学齢期の子どもたちの学びを支える」。 

子どもに寄り添い支える「心のケア」、将来を見据えるための「学習支援」が足りない 

震災後3年を経て、子どもたちを取り巻く家庭や地域はどのように復興に向かっているだろうか、あるいは、遅々としているのだろうか。特に被災三県の被災地域では、ようやく取り組まれ始めた再建計画の実施により、新たな転居、保護者の仕事や暮らし方の変化などが起きている。丸3年という時間の経過により、子どもたちは家庭や地域での支えられ方に、大きく、あるいは少なからず差が出てきており、その支えられ方の違いを否応なく受け止めながら、子どもたちは、個々に自分の生活や将来を考えなければならない時期に来ている。 

被災地からの報告では、発災後、いち早く子どもの「心のケア」の必要性が考えられ、子どもたちの学力や学びの継続支援に対して、臨時教員の加配措置、スクールカウンセラーの派遣などが行われ、また、家庭支援との協同の取り組みの必要性からスクールソーシャルワーカーの配置が取り組まれてきた。にもかかわらず、不登校や退学にいたる事例が多くみられるなど、学びの継続が困難となってしまっている子どもたちが増えているなど、子どもたちが出す警告が一層顕著となっている。

岩手県からの報告◆(死者5111人(震災関連死49人含む)、行方不明者1142人、3万人以上が仮設住宅に暮らす)【依然、体育グラウンドに仮設住宅が立ち並ぶ高校や、遅々として進まない新校舎建設、長距離スクールバス通学、小中で進む統廃合が子どもを取り巻くコミュニティを分断。保健室利用が2倍、3倍に増加、3年を経て家庭ごとに環境の変化が進んでおり震災の話が子どもも教員もしにくいなど、子どもの心のケアがますます必要となっている。すべての教員が不登校の子どもに電話で対応、迎えに行くなど児童生徒との触れ合いを行う一方、子どもの困難を支える教員の心のケア・スーパーバイズが足りていない。そもそも単年度ごとに人が変わる教員加配では、人材の定着に課題が残る……】澤瀬清巳さん(岩手県高等学校教職員組合)

福島県からの報告◆(1992年設立:不登校の子どもを支えるフリースクール)【民間としてフリースクール・フリースペース・環境教育・通信制高校サテライト校を実施してきた経験から、被災

福島県からの報告

後、公教育が支えきれない子どもたちのサポートを担ってきた。被災した子どものニーズは、子どものストレス発散をサポートすること、保護者のストレスから子どもを守ることが重要。実際には、被災後、離散が進み子どもたちの間に分断が起こっている。仮設住宅から少しずつ人が少なくなっているために、孤独感にさいなまれている。区域外就学という事情をほとんどの子どもが抱えていることから、子どもが地域のアイデンティティを持ちえない。結果、子ども同士の関係性が流動的であり、何より「子どもはもう頑張れない」状況にある。それでも子どもだけが被災地の希望なのであり、被災した子ども自身が主体的に大人と社会をつなぎ直していく役割を担えるような、子どものエンパワメントを支えたい。中学校区くらいを一つの単位:地域に公教育とフリースペース、チャイルドラインなど民間とが連携・相互補完しあって子どもを支えるしくみづくりを実体化したい……】江川和弥さん(寺子屋方丈舎)

宮城県からの報告◆【宮城県教育庁が把握する小中学校の不登校児童生徒数は、小学校449人(前年度比18人増)、中学校2017人(前年度比103人増)と明らかに増加傾向にある。同庁義務教育課の取り組みとして、全中学校、教育事務所などへのスクールカウンセラーの配置・派遣、カウンセラーへのスーパーバイズ、研修会などを実施してきた。また、学齢期の子ども支援として「学び支援コーディネーター配置事業」を行ってきた。関東圏内の大学生や教員OBOGらを支援員に任じ、小中学生の放課後や長期休み中に課外授業を行うもの。また、宮城県では甚大な津波被害を受けた沿岸部の12市町を中心に「緊急派遣スクールカウンセラー事業」を展開。昨年度実績で延べ2048人のカウンセラーを派遣してきた。石巻市501人、次いで気仙沼市452人などの順である。子どもたちをいじめ・虐待から守るためにも、子どもたちの育ちを支える教育と福祉の連携が問われている。スクールカウンセラーの派遣増員は継続課題……】千葉睦子さん(宮城県教育庁義務教育課)

臨時教員・スクールカウンセラー・スクールソシャルワーカーの継続・量的配置を

意見交換では、さらに国による子ども支援に係る報告が文部科学省、厚生労働省、復興庁からあり、その後、質疑・意見交換が行われた。被災地での教員加配においては単年度ごとに人が変わる現状を改め3年、5年と臨時教員が学校に定着できるよう求める提案や、スクールカウンセラー・スクールソシャルワーカーの重要性とともに、教員加配と同様、国で予算が用意されても専門家が定着しにくい現状では大人社会も疲弊。少なくとも5カ年の任期制とするなど継続性を担保する施策転換を、などの提案が行われた。

各省庁からは、現地視察を進め検討をはかることが、また、子どもの声を聴く活動や公教育と民間教育との連携策については、現在国会内で立ち上がった「多様な学び保障法制をめざすフリースクール議員連盟」の動きなどを注視したいなど応答があった。

その後、党派を超えて参集した多数の国会議員から震災子ども支援への決意が語られ、会場との意見交換へと進めた。 

4年目の新学期を迎えた、被災地の子どもたちについての現地からの報告や提言は重く、そして緊急性を要するものばかりだ。関係各省庁、復興庁が果たさねばならないきめ細かな支援は何か、今後の子ども支援として何を私たち市民社会は取り組まなければならないのか、などが次第に明らかとなった第11回情報・意見交換・政府交渉は、予定時間をオーバーして終了。子どもが真ん中の被災地復興、子ども支援を一歩でも先に進めるために、立場を越えて力を出し合う、そういう時期に来ている。

 

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