リニア中央新幹線計画に環境大臣意見 形式だけの「環境影響評価」に違法性はないのか?!

今秋の工事着工を中止・凍結し、出直し環境影響評価を行うべき!

65日、JR東海が実施予定のリニア中央新幹線計画(東京―名古屋間)に係る環境影響評価書に対し、環境省「環境大臣意見書」(以下:大臣意見)を国土交通大臣に提出 

環境省は、去る65日、JR東海が実施予定のリニア中央新幹線計画(東京―名古屋間)に係る環境影響評価書に対し「環境大臣意見書」(以下:大臣意見)を国土交通大臣に提出した。

大臣意見では、JR東海が「環境への影響は小さいと認められる」とした環境影響評価に対して、「本事業は、東京都と名古屋市の間約286km(地上部40km、トンネル部246km)を超伝導リニアにより結ぶものであるが、その事業規模の大きさから本事業に伴い相当な環境負荷が生じることが懸念される」「環境への影響を最大限、回避・低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」「本事業のほとんどの区間はトンネルで通過することになっているが、多くの水系を横切ることになることから、地下水がトンネル湧水として発生し、地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。特に、山梨県から長野県にまたがる地域の一部は、我が国を代表する優れた自然の風景地として南アルプス国立公園に指定されており、またユネスコエコパークとしての利用も見込まれることから、当該地域の自然環境を保全することは我が国の環境行政の使命である」と述べ、その具体例として「(約27KWという)これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」「(工事用水の取水は)河川流量や生態系に影響が生じない場合にのみ行うこと」「本事業は関係する地方公共団体及び住民の理解なしに実施することは不可能である」などと再三、再四指摘している。                      

国交省は、まずこれら大臣意見を真摯に受け止めるべきは言うに及ばないが、一方で大臣意見は、大気汚染や騒音・振動対策、厖大な残土処理などについては、「講じるべき措置を伝達すること」などと「適切な環境保全措置」を求めたものの、具体性に乏しく、また適切な環境保全措置が実施されているかどうかをチェックする体制づくりへの言及はない。そもそもリニア中央新幹線は、超電導磁気浮上式(電磁力により地上10cmを浮かんで走行:最高時速505km)を採用して走行するため、車内はもとより駅構内においても極めて強い磁界が発生する。リニア走行が人体に与える磁界や低周波の影響について、環境評価書で詳報されない現状は大いに問題であり、本来であれば議論以前であるが、しかしながら、大臣意見ではこの問題に一切触れていない。総じて大臣意見は、リニア中央新幹線計画の抱える問題性について徹底見直しを求めるものとはなっていない。 

そもそもJR東海が公表した環境影響評価書そのものが問題、違法とも言える代物なのであり、大臣意見をみるまでもなく、実に杜撰で安直であると言わざるを得ない。消費電力一つをとってみても、脱原発・省エネルギー社会をめざそうとしている今、在来新幹線の3倍超という厖大な電力を消費するリニアの超高速走行を進めることは時代に逆行するものである。さらに、生態系、残土、騒音、振動、磁界、教育福祉環境、景観、水……そのどれをとってみても、「影響は小さい」「低減をはかる」といったJR東海の結論とは真逆にその影響は過大であり、とうてい沿線住民の理解を得られるものではない。

昨今の国土交通委員会で示された自民党案(東京オリンピックには大阪まで伸長)は、事実上の国費投入・国家プロジェクト化を任じるものであり、問題はさらに肥大化している。この現状においては、今秋の工事着工を中止・凍結し、出直し環境影響評価を行うべきは当然であり、東京・生活者ネットワークはリニア・市民ネット東京、沿線住民ネットワークとともに、時代と逆行するリニア中央新幹線計画の白紙撤回を求めていきます。  

リニア中央新幹線の法律問題-リニア訴訟を展望する-

6.7リニア・市民ネット集会から 

 

左から、川村晃生さん、関島保雄さん、五十嵐敬喜さん。右は、会場から発言するジャーナリストの斎藤貴男さん

こうした状況下、環境大臣意見が公表されて2日後となった67日、東京・生活者ネットワークも共催する「リニア中央新幹線の法律問題-リニア訴訟を展望する-」講演と意見交換会が、リニア・市民ネットの主催で開催された(東京・立川市)。

第一部:講演では、まず弁護士で日本景観学会会長の五十嵐敬喜さんが登壇。行政訴訟の可能性から始めた五十嵐弁護士は、そもそも欧州に比べ日本の法体系は行政擁護の体系であると前置き。「行政庁の裁量処分について、裁量権の範囲を超えまたはその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる」との《行政事件訴訟法》を紐解いた。残土、景観、費用、電力消費などなどがこれ(行政訴訟の対象)にあたるか。鞆の浦判決、大飯原発稼働差し止め判決などに照らし、不当を乗り越えて違法を勝ち取ることは可能か。費用対効果の援用は可能か。健康・人命被害、騒音、電磁波など被害当事者による民事訴訟で迎え撃つかなどを論証。また、沿線住民毎に訴訟を起こすのか、あるいは、貴重な景観・地形・地質・生態系を有し、生命進化の記録を内包する世界遺産級の山・南アルプスに穴をあけるリニア中央新幹線計画を糾弾するのかなどを提起。

 

リニア・市民ネット主催の講演と鼎談「リニア中央新幹線の法律問題―リニア訴訟を展望する―」。2014年6月7日、たましんRISURUホール(立川市民会館)で

続いて登壇した関島保雄弁護士からは、まず圏央道問題で訴訟にあたった経験や横田基地騒音裁判の経験が披露され、そもそも形式だけの環境影響評価書に違法性はないのかなど、沿線住民の懸念に応えないまま本格着工を目論むこれまでのJR東海の動きに対して対抗軸を示唆。地下トンネル工事による巨大な量の残土問題(東京ドーム51個分)はリニア計画の弱点であること。大深度地下トンネル計画であっても、人格権、環境権などに基づく差し止め訴訟は可能ではないか。大深度地下が補償もなく使える唯一の根拠は、その「公共性利用」にあるが、南アルプスを破壊するリニア計画に公共性は成立するのか……などなど。リニア中央新幹線工事着工を中止し、白紙撤回に持ち込むための多くの示唆と、あらゆる可能性を共有する場となった。

第二部では、五十嵐弁護士、関島弁護士、リニア市民ネット代表の川村晃生さん(慶應大学名誉教授)が登壇。三者による討論に加え、会場を交えての全体討論へと進めた。

最後に恒例となった、リニア市民ネット、沿線住民ネットワークに集う市民・団体によるアピールタイムが設けられ、都県を越えて情報を交換。今後の活動計画が共有され散会となった。 

◆インフォメーション◆東京・生活者ネットワークは、リニア新幹線走行ルート沿線の自治体・市民の声を結び、リニア建設本格着工を凍結、計画の白紙撤回を求める《リニア・市民ネット東京》の活動に賛同しています。6.17環境省、国土交通省交渉にご参加ください。

JR東海リニア中央新幹線計画  環境影響評価書の不備を質す

-環境省、国土交通省との院内集会-

期日:2014 617() 10:0012:30

会場:衆議院議員第一議員会館 第6会議室

主催:沿線住民ネットワーク(6.5環境省申し入れ団体)

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次