東京都議会2023年第3回定例会を終えて(談話)

2023年第3回定例会を終えて(談話)

2023年10月5日

  都議会生活者ネットワーク  岩永 やす代

 

本日第3回定例会が閉会しました。

環境確保条例改正について

今議会に出された改正案は、キャップ&トレードの削減義務率を引き上げることや中小規模事業所の省エネ・再エネ利用の拡大を促進するため地球温暖化対策報告書制度を強化するものです。今年IPCCは、気温上昇を1.5℃以内に抑えるためには各国の温室効果ガス削減のさらなる取り組みが必要であると指摘しました。国際的には相次ぐ山火事や熱波など「地球沸騰」と称した危機感が広がりながら、戦争による国際情勢を背景に、各国の協力体制が構築できない不透明な状況が続いています。日本でも、今年真夏日も猛暑日も過去最多で殺人的な暑さと言われ、さらに、「記録的」な台風、豪雨も頻繁に起こっているにもかかわらず、再エネ目標の低さなど、政府が本気で取り組む姿勢は見えません。ゼロエミッション、カーボンハーフを掲げる東京都の役割は重要で、国への制度提案とともに自ら実施する事業の加速も必要です。

CO2削減と同時に身近な問題として、健康にかかわる暑さ対策も重要です。空調設備の効率化と建物の断熱化が効果的であり、とりわけ子どもたちの学習環境整備の観点からも学校の断熱改修を求めました。また、サーキュラーエコノミーをめざし、質の高いリサイクルのしくみづくりを提案しました。

 

明治神宮外苑の再開発について

今議会でも、神宮外苑の環境を守ってほしいと出された請願が審査されました。

そもそもこの地域の再開発は、2020オリンピック招致を表明し「スポーツクラスター」構想を公表した2011年から始まりました。2013年には、大会開催の決定前に、東京第1号の風致地区をないがしろにし、高さ制限を大きく緩和、巨大な国立競技場の建設を可能にする地区計画を決定しました。その後も地区計画の変更が行われ、区域の拡大や新たな制度をつくるなど、事業者のやりたい放題にどんどん大きなビルが建てられるように、都がそのお膳立てをしていきます。

1年遅れで開催されたオリンピック・パラリンピックは、閉幕後も談合や汚職事件など金まみれの問題が続出し、IOCがオリンピックマネーのための組織である実態も露呈しました。さらに、この神宮外苑の再開発がオリンピック招致から始まり、どちらも小さく生んで大きく育てる公共事業のやり口そのものです。それによって追いやられるのは、100年育まれた樹木や都心の貴重な緑に満ちた景観であり、都民全体の財産です。今、「外苑を守れ」の声は大きく広がっています。再開発を根本から見直すために、知事の決断しか解決の糸口はありません。

 

018サポートについて

家庭の所得に関わらず0歳から18歳までのすべての子どもに対して、一人あたり月5千円、年額6万円を支給する018サポート事業が開始されました。ところが、生活保護世帯は給付金の全額が世帯の収入として認定され、生活保護費から減額されることが明らかになり、厳しい生活環境にある子どもたちに支援が届かないことは大きな問題です。また、オンラインでの申請手続きが煩雑であるなどの苦情が多く寄せられています。都の独自施策として打ち出すのであれば、都の責任において、ていねいかつだれもが納得する制度設計にすべきです。

 

地下水のPFAS汚染について

地下水のPFAS汚染について、多摩地域では、水質調査や学校の井戸に浄水器を設置するなど、独自の対策を進めている市があります。また、各市の市議会からも意見書が出されており、飲み水の安全性に関わる問題に、市民の不安は払しょくできていません。

都は現在行っている地下水調査に加え、数値の高い地域で追加調査を実施しその結果を年度内に公表するとしています。都民の不安解消と貴重な資源である地下水を保全するために、自治体との情報共有を進め、汚染源特定と汚染除去に取り組むとともに、自治体独自の取り組みへの支援を求めます。

 

精神障がい者への支援について

八王子市滝山病院では、今年2月、複数の看護師による患者への暴行事件が発覚しました。このような暴行・虐待など障がい者の人権侵害が見逃されてきたことに、実地指導や立入検査を行っている東京都の監督責任が問われています。

事件発覚後は、一刻も早く患者の転退院が必要です。都は入院患者への意向調査を行い、30人が希望したにもかかわらず、8月末で転院できたのは5人に留まっています。転院の困難さは聞いていますが、だからこそ協力を申し出ている関連団体の力も借りて、転院が進むよう都の努力を求めるものです。

さらに、精神障がいのある人が退院後に安心して地域で暮らすことができるよう、住居の確保や生活支援など希望に寄り添った支援とともに、退院前から退院後の地域の暮らしを当事者の立場で支えるピアサポーターの充実も必要です。

 

 

ウクライナの戦争は長期化し、環境破壊が続いています。気候危機は一層深刻化し、わたしたちの生活を脅かします。

困難な時代にあっても、都議会生活者ネットワークは、持続可能な社会の実現に向けて、多様な人が暮らす東京を生活のまちにするため取り組んでいきます。みなさまからのご提案をお待ちしております。

 

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