「経済大国ニッポン」が生む「女性の貧困大国」

「経済大国ニッポン」が生む「女性の貧困大国」

 

東京・生活者ネットワークは「女性の働き方」連続講座Ⅰ、Ⅱを4月から5月にかけて開催。

 

連続講座の1回目は竹信三恵子さん(和光大学教授、ジャーナリスト)を講師に「『経済大国ニッポン』が生む『女性の貧困大国』」というテーマでお話しいただいた。

 

日本の女性の貧困

「女性の働き方」連続講座Ⅰ「『経済大国ニッポン』が生む『女性の貧困大国』」。講師の竹信三恵子さん(和光大学教授、ジャーナリスト)。4月11日

「女性の働き方」連続講座Ⅰ「『経済大国ニッポン』が生む『女性の貧困大国』」。講師の竹信三恵子さん(和光大学教授、ジャーナリスト)。4月11日

そもそもGDPが2位3位のころから女性の貧困問題があり「男から金をもらえ」といった、女性は男性にたよって生活することが前提。安倍政権が「女性の活躍」を打ち出したことで、「女性」がクローズアップされ、日本の女性を取り巻く状況がやっと注目されたと話される。日本はGDPが豊かなのに、男女の賃金格差が大きく、女性の貧しさのうえに経済発展した社会ではないか?

今の日本の相対的貧困率は16%、6人に1人が貧困。女性は3人に1人で、男性がいないと生活できないことがわかる。65歳以上の高齢女性の45%は無年金や低賃金ゆえの低年金。19歳以下の子どものいるシングルマザーの57%が貧困。いかに単身女性が貧困か?また、直接女性のホームレスに話を聞いたことや自らの野宿体験についても話された。ホームレスの多くは男性。1%といわれる女性ホームレスの実態が見えないことから、女性の貧困が見えにくいと指摘される。

 

男女雇用機会均等法施行が招いた!

1986年男女雇用機会均等法のとき、女性の給料は300万円以下が圧倒的だが、2006年では200万円以下が増えて、非正規がじわじわ増えている。男性も非正規が増え、収入も低くなっているので、男性も貧困化している。さらに長時間労働が家事、育児、介護を伴う結婚を先延ばしにしている。国際比較で週50時間以上の労働者の割合が30%を占め、日本が突出している。均等法成立の時、本来はともに家事、育児、介護を担うよう短時間労働にしなければならなかったが、女性も男性同様に長時間働けるよう女性保護規制をはずしたことが問題。その結果、1985年当時、67.9%だった女性正社員は2012年42.4%と正規を増やすことにはつながらなかった。

なぜ、女性の賃金が安いのか? 女は夫に養われていることや、子どもの面倒を見ながら、合間に働いているのだからという安くていいのだと社会全体が認めてしまったことにある。女性の正社員でも男性の7割の賃金でしかない。役職に就くと給料が上がるが長時間労働で家庭との両立ができないため、昇進はできない。賃金格差は非正規にも歴然とあり、その理由が女はいずれ結婚するからという。均等法以降、女性は子どもが産めなくなったのが現状だ。しかし、男性の置かれている状況も変わって、非正規の男性も貧困に陥っており、パートナーには働いてほしいという要求がでてきている。

 

産業構造が変わったことに適応できない日本

「女性の働き方」連続講座Ⅰ

「女性の働き方」連続講座Ⅰ

グローバル化、新自由主義がこれまでの男性中心の産業構造から女性も働かなければ成り立たない構造に転換した。にも関わらず、日本では識者といわれる男性の意識が今も変わらない。女性が貧困になる構造を変えるためには雇用形態で大きな収入差があることが課題だ。同じ内容の仕事の内容なら、均等待遇にすべきだが、社会全体で不安定雇用を増やしているのが現実だ。「男女共通労働時間」規制をしないといけない。国際的にみると、ほかの国では改善されているが日本はできない。

この要因の一つに女性議員が増えていないことがある。世界の国会議席数の男女比率を見ると女性議員が平均20%を超えたが、日本は11.35%と190か国中163位と低迷。スウェーデンでは女性議員が働くための環境整備が進んだことで、保育園と福祉の予算が拡充し、結果的に福祉予算が増えた。このことからもあらゆる意思決定の場における女性の割合を3割以上にすることで政策決定に影響力がでてくる。

 

女性の政治参画を進めることによって、70~80年代の高度成長モデルから、男女がともに働き、家事、育児、介護ができる持続可能な社会へ、構造転換をしていくことが急務であることを確認した学習会となった。

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