「オール沖縄」と連帯しよう! 日本の自立・地域の自律とアジアの平和を築く行動を共に始めよう!~「前泊博盛さんに聞く―米軍基地問題と私たちの暮らし」学習会から

 

オバマ米大統領来日を翌日にひかえた4月22日、開催された「沖縄と連帯する東京集会」。講演したのは、元沖縄県議会議長で元自民党沖縄県顧問の仲里利信さんと、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんという異例の顔合わせだった。文京区で

 

新基地建設予定地とされる辺野古(へのこ)。沖縄本島名護市の東海岸に位置する

 

 

「オール沖縄」と連帯しよう! 日本の自立・地域の自律とアジアの平和を築く行動を共に始めよう!~「前泊博盛さんに聞く―米軍基地問題と私たちの暮らし」学習会から 

オバマ米大統領の来日に合わせて、連日連夜、各地で、オール沖縄と連帯する市民集会や辺野古新基地建設に反対する市民集会が開催されている。

辺野古新基地建設推進をアピールする日米両政府―この6月にも埋め立てのためのボーリング調査に着手するとし、埋め立て工事を強行しようとしているが、一方、国際社会では、オリバー・ストーン、マイケル・ムーア、ジョン・ダワーら米・欧・豪の識者らが「新基地建設は沖縄の軍事植民地状態を深化・拡大する取り決め」だと指摘し、日米両政府に普天間基地の無条件返還を求める国際署名活動を繰り広げている。ところがこの間、米国でも、米海兵隊総司令官や日米安全保障の専門家などから、沖縄・辺野古基地建設を疑問視し建設見直しを求める声が次々にあがるなど、地殻変動ともいうべき変化が起こっている。すなわち、「軍事的に辺野古には必要ない」「地元住民の反対で建設は困難」などであり、ニューヨークタイムズはその社説面を割いて辺野古新基地建設反対を表明した。

そして今、沖縄ではさらに大きな歴史的変化が進んでいる。沖縄県民が「21世紀の琉球処分だ!」と怒り、その尊厳をかけて争った名護市長選挙では、安倍政権の率いる凄まじいまでの暴圧をはねのけ、「辺野古新基地建設絶対反対!」を掲げた現職・稲嶺進市長の再選を果たし、この3月には「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議(略称:島ぐるみ会議)」の立ち上げに着手。文字通り「オール沖縄」の再構築をめざす運動が急ピッチで進行しているからだ。安倍政権が進める対米追従・日米同盟強化・軍備拡張政策、集団的自衛権行使容認を目論む憲法解釈改憲の動きは、先の戦争で「本土防衛」の最前線に立たされた沖縄県民にとって許しがたい事態であることは自明の理なのであり、今こそ私たちは、沖縄とともに、真に日本の自立・地域の自律と、アジアの平和を築く行動を共にしなければならない。

 

【以下:東京・生活者ネットワーク発行 月刊『生活者通信』№.270 2014年3月1日号より再掲】米軍基地と沖縄問題=法の下の米軍優位=「日米地位協定」問題に焦点を当て開催した、元琉球新報論説委員長で沖縄国際大学教授・前泊博盛さんに聞く―1.30東京・生活者ネットワーク学習会から報告する。 

本当は、憲法よりも大切な「日米地位協定」 前泊博盛さんに聞く―米軍基地問題と私たちの暮らし

白砂とサンゴ礁、遠浅の美しい海浜に緑の島影。常夏の島・沖縄を訪れる観光客は年間600万人を超え増え続けている。かつて琉球王国が栄え独特の文化が息づく沖縄は、しかし、戦火の傷を今なお残す慰霊の島であり、同時に基地の島でもある。1972年日本に復帰するが米軍基地は撤去されることなく存続。在日米軍基地の74%が、日本の面積の06%に過ぎない沖縄県に集中、県土に占める基地の割合は18%、沖縄本島においては、実にその20%が米軍基地である。

名護市長選が示した民意

「沖縄に行ったことがある人は? 写真のここがキャンプ・シュワブ。シュワブには、すでにこれだけの基地が存在しています。さらに、ここ辺野古崎を基地にするために埋め立てるかどうかが問われています。でも、今ある基地も廃止するということでなければ……」。講演は、こんな投げかけかけから始まった。

119日に行われた名護市長選挙は、自民党幹事長が駆けつけ500億円の振興基金構想を示したことからもわかるように、普天間基地移設の是非が最大の争点であった。結果、基地移設に反対する稲嶺進市長が4千票の大差をつけて再選。移設反対の民意が高らかに示された。そもそも「普天間基地の早期閉鎖・返還、県外・国外移設」が県民総意であるにもかかわらず、安倍首相は、辺野古移設を強引に推し進め、そこに巨大米軍基地を新設しようとしている。

遡る昨年1227日、仲井真弘多沖縄県知事は辺野古の海の埋め立て申請を承認。沖縄は基地がなければ食べていけない、お金をあげるから移設容認を…中央政府の言い分に屈したかたちだが、では、沖縄は本当に基地がなければやっていけないのだろうか。

基地依存経済というまやかし

基地に落とされるお金。新しい基地や施設をつくるお金=公共事業は、確かに沖縄に落ちる。だが受注するのは大手ゼネコン。沖縄には孫請け、曾孫請けの小さなお金、ようやく6割しか残らない。地元優先発注が言われるようになってやっと6割。それまでは4割しか残らなかった。沖縄に投げているつもりで、実は中央、主に東京に戻ってくるしくみ=ザル経済だ。ダダ漏れ状態。それが、沖縄への投資ということになっている。

基地予算はどうか。普天間基地の面積は480 ha。軍用地料、周辺対策費、関連施設費を含め1当り2153万円。対して基地の外のエリア・宜野湾市の生産性を見ると1ha当り8347万円と38倍もある。キャンプ・キンザー、牧港補給基地も同様で、基地内の1ha当り6316万円に比して基地の外は1ha当り14862万円と24倍だ。税金によって賄われる不経済な経済、それが基地依存経済。基地があるために、むしろ損失が出ている。試算は仲井真県政によるもので、沖縄の損失利益は年1兆円。基地があるために、毎年1兆円のお金が失われていると公表している。

では、本当にない方がよいのか。ハンビー飛行場が返還されてできたハンビータウン。中日ドラゴンズのキャン

元琉球新報論説委員長で沖縄国際大学教授の前泊博盛(まえどまり・ひろもり)さんの講演。1月30日、西新宿で

プ地となる球場や陸上競技場も整備され、今や3500人がこのまちで働く。税収効果で見ると、固定資産税357万円から1857万円にまで増えている。返還された方がはるかに経済効果が高い。問題をしっかり実数で押さえていくと、基地が地域経済を潤すなどはまやかしであることがわかる。

沖縄に基地が存続するわけ

沖縄本島を中心に1000㎞の円を描くと、その中に福岡・上海・台北が、2000㎞では東京・ソウル・ピョンヤン・北京・香港・マニラなどの主要都市がすっぽり入る。キーストーン・オブ・パシフィックと呼ばれる沖縄本島、沖縄に基地がある理由はこのためだとされてきた。

しかし、この地図が通用したのは1960年代初頭まで。6667年には、辺野古新基地計画を撤回、沖縄の基地は全てグアム・サイパン・テニアンに撤退するという米国の決定が行われた。当時、中国が核ミサイルの開発に成功。沖縄は短距離ミサイル一発でダメになる。米国は沖縄を捨て1200㎞セットバックするという選択をしたわけだ。これに対して、実は日本が米国にしがみついて退かないでとお願いしていた経緯が昨年11月、米国の機密文書から明らかにされた。もはや沖縄に基地がある理由は薄く、日本がいてほしいからそこにある。これが

米軍基地が存在することで、沖縄だけではなく、首都圏を含む巨大な空域が、米軍管理のもとにおかれている。この横田ラプコンには東京、栃木、群馬、埼玉、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡の1都8県に及ぶ上空がスッポリ入っている

実態だろう。

そもそも、抑止力とは

「最低でも県外」。普天間基地を最低でも県外に移設するという有名な鳩山発言。沖縄ではみな飛びついて彼を支持した。政権をとらせた。結局、数年で民主党政権は消失してしまうが、沖縄ではもっとがっかりさせられることになる。半年も経たないうちに、「学べば学ぶほど抑止力は必要」と前言を翻し、辺野古移設案に戻して辞めていったからだ。後に、「あれは方便」とも述懐した。抑止力は方便!? その方便を未だに日本は抑止力と言い張り、その抑止力のために沖縄に負担を強いている。

日米地位協定とは何か

在日米軍の存在は、憲法公布に続く「天皇メッセージ」(19479月)に端を発するが、では、なぜ今日なお。日米安保体制が必要なのだろう。外務省HPによると、「戦後の日本は憲法第9条に従い自衛のために必要な最小限の防衛力のみを保有し、相手から暴力を受けた時に初めて暴力を行使するといった専守防衛に徹し、また唯一の被爆国として非核三原則を…」とあり、

沖縄県民あげての反対にもかかわらず、墜落を繰り返す危険な輸送機オスプレイの配備がすすんでいる

さらに「日本は平和国家の道を歩んできました。こうした政策は世界に誇れるものですが、外部からの攻撃を未然に防いだり日本の安全を揺るがすような事態に対処するには、自らの防衛力だけでは十分に対応できるとは限らないのも事実です。憲法の精神に従って軍事大国にはならず国と国民の安全を確保するためには、自

 

由と民主主義という価値観をともに有し、もっとも信頼できるパートナーである米国と日米安保条約を結び、日本の防衛力と米国の抑止力を背景に日本の安全を維持する日米安保体制がもっとも現実的で効果のある選択と言えるでしょう…」と続く。

専守防衛!? 今や勝手に海外派兵するこの国で、専守防衛である。原発がこれだけあるのに、使用済み核燃料から取り出した原爆材料プルトニウムを44tも保有するこの国で非核三原則である。そして、盾が自衛隊、矛が米軍。盾と矛が同時に必要であると説明する。結果、米軍の日本駐留は半世紀を超え、やがて戦後69年を迎えようとしている。この米軍駐留に関する日米間の法的取り決めが「地位協定」であり、「安保条約の目的達成のために我が国に駐留する米軍の円滑な行動を確保するため、米軍における我が国の施設区域の使用と我が国における米軍の地位について規定したもの」とされる。

しかし、その内実は以下に触れるように「法の下の不平等=米軍優位」を約したもの、日米安保と極東の安全という大義名分のもと、今日なお占領国と被占領国の関係を維持し続ける日米両国の不健全な関係そのものであり、日本国民の正当な権利を不当に侵害する元凶となっているもの、それが地位協定なのである。

◆法の空白 返還された基地の地中からドラム缶が大量に発見されている。基準値をはるかに超えるダイオキシンン・PCB・重金属・ヒ素が出てくる。戦闘機を洗った廃油・オイル、それら汚染物質が地中に浸み込んでいく。残された建物にアスベストが使われていても、米軍は事態を認めない。環境条項がないため責任を問われることもない。恩納村104号線越え実弾演習が知られるが、米国内では演習時の不発弾はその日、その地で処理する一方、沖縄では、不発弾処理はされていない。原状回復義務を課さない地位協定の問題だ。なぜ日本は自国の領土を汚染されたまま、打ちっぱなしにさせてそれを許してしまうのか。ドイツでは許されないことが日本では許されている。

◆米兵犯罪 施政権返還後40年間に限っても沖縄の米兵犯罪件数は5700件と、年平均140件を数え、レイプ事件・殺人・強盗といった凶悪犯罪が多発している。起訴率で比べると日本人49%、米兵は17%と低い。遊興中に事故を起こしても、後から公務証明書を出せば公務中を理由に起訴を免れる、軽微な罪は起訴しないなど恣意的な運用を可能にする密約があるからだ。

◆爆音被害 爆音訴訟や飛行差し止め訴訟が後

米空軍の低空飛行訓練ルートは日本中に及んでいる

を絶たない中、昨年末、仲井真知事が辺野古埋め立てを承認。直後からオスプレイが夜中も正月も飛ぶようになり爆音被害が急増。基地を受け入れるとは、基地の運用も自由にさせるということだ。

◆免法特権 最たる特権が米軍人・軍属の出入国の自由。米兵には入国管理法が適用されない。誰が入ってきて誰が出ていったか、誰が犯罪を侵した犯人かがわからない。

◆航空法の適用除外 低空飛行訓練の自由が許されるのは、日本の航空法が適用されないから。東村高江の集落が「標的の村」となっている実態が注目されているが、ここはベトナム戦争時、米軍によってベトナム村が建設され、幼児を含む住民がベトコン役を担わされた歴史がある。低空飛行は訓練であるから事故は必至。沖縄県が確認しているだけでも復帰後40年間で540件を数え、うち墜落43件、死傷者・行方不明者は84人に上る。そして今、米軍の低空飛行ルートは日本全土を覆っており、標的は高江や沖縄に限らない。オスプレイに限らないジェット戦闘機が国土をほしいままに使い、訓練を繰り返している。そして、普天間飛行場同様、クリアゾーンなしの航空法適用除外は、まさに東京が抱えている問題である。横田基地を中心に米軍が空域を支配する「横田ラプコン」の問題は非常に大きく、民間航空機の飛行、離発着を危険、困難たらしめている。

◆治外法権 潜水艦が他国の領海内に入るとき

米軍の大型ヘリコプターが墜落、炎上した沖縄国際大学の事故現場。墜落したヘリは、放射性物質ストロンチウム90を含む回転翼安全装置・氷結探知機を装備していたが、うち1個の装置は焼けて気化した可能性が高いと発表された。現場を封鎖し、作業にあたる防護服を着た米軍兵士ら。2004年8月17日。写真:琉球新報

は、侵略の意図がないことを示すべく浮上掲旗義務が、地位協定上も国際法上も課せられているが、米潜水艦だけはお構いなしに侵入。治外法権で片付けられる実態は枚挙にいとまない。

◆密約 地位協定には、国民の権利や財産を蹂躙しているからこそ出せない密約がついて回る。指定前秘密・極秘・マル秘・取扱い注意・無期限秘などの、いわゆる密約文書は、秘密保護法の施行とともに対象となることが危惧される。主権在民の日本であれば、国の持てる情報は市民のもの、断じて、これが原則でなければならない。

沖縄問題を考えるために

――かつて侵略を試みた日本は、優に1千万人を超えるアジアの同胞を殺害し、同時に310万人の国民が命を失い、うち20万人が沖縄戦で亡くなっている。全戦没者のうち民間人は80万人を数え、その1割を超える94千人が沖縄県民であった。「命どぅ宝(命こそ宝物)」との強い思いは、戦火の犠牲を強いられた沖縄県民の切なる願いである――(前泊博盛著『もっと知りたい!本当の沖縄』エピローグより)

あらためて沖縄問題とは何か。講演を通じて前泊さんは、政治的には、「日本の民主主義と主権の問題」。経済的には、「自立経済のための地域の自律」。社会的には、「差別を許さない他者への思いやり」の問題であり、沖縄に留まらない私たち一人ひとりの問題であると論じた。

「今なら中国に勝てる」(自衛隊幹部)発言と日本版NSC設置、続く秘密保護法強行採決。米国の誤報で殺戮に加担したイラク派兵、その反省のないままの米国追従安保。集団的自衛権行使容認の動き……問題は山積している。しかし、そうであればなおさら地位協定問題は、日米両国が真のグローバル・パートナーの関係にあるかどうかをはかる試金石ともなり得るもの。日本が主権を有する法治国家であれば、駐留米軍による犯罪、環境を汚染する行為、治外法権、国内法に反する行為は認めない、許さないという姿勢で米軍と向き合う。日米安保一本やりから多国間安保への転換(AU共同体構想)を図るためにも、そういう時期に来ている。<了>

 

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