リニア中央新幹線計画アセス準備書の欺瞞を問う―品川で沿線住民集会

JR東海“リニア中央新幹線計画”を考える 2.23集会開催される

品川に、沿線住民が集結 

 

荻野晃也さんの講演

JR東海によるリニア中央新幹線計画は現在、想定される沿線各都県で「環境影響評価(アセスメント)準備書」に対する環境影響評価審議が進められており、この春には各都県の「知事意見」が公表される見通しにある。そして、その結果如何では、今秋にも事業着工が危ぶまれる状況となっている。 

世界に例のない約440キロメートルの長大地下トンネルを無人で走るリニア中央新幹線。223日、その起点とされる品川に、都県を超えて沿線住民が集結。主催団体を代表してリニア市民ネットの懸樋哲夫さん

荻野晃也さん(左)と川村晃生さん(中央)

が開会。はじめに基調講演が行われ、慶応義塾大学名誉教授・景観学会副会長の川村晃生(かわむら・てるお)さんが「景観破壊問題」を、電磁波問題の第一人者・京都大学原子核工学教室元講師の荻野晃也(おぎの・こうや)さんが「電磁波健康被害」を論じた。続いて、東京・神奈川~名古屋に至る各沿線住民・リニア問題を考える関係団体がリレー報告。 

東京からは大田・生活者ネットワーク前区議の奈須利江が、残土問題を主眼に問題提起。品川・生活者ネットワーク区議・井上八重子が、主催団体:リニア・市民ネット東京を代表して進行役をつとめた。 

 

品川・生活者ネットワーク区議の井上八重子が進行役をつとめた

沿線各地で、これまで行われてきた準備書説明会や意見募集、公聴会では、多くの都県民が意見を述べてきたが、そのほぼすべてが、JR東海の示した準備書が著しく安全性を欠いている内容であること、環境対策においてもなんら具体性の見いだせないものであることを指摘。すなわち――

◆車体に超伝導・電磁石が設置されているリニアに乗車する乗客は、放射線の一種である電磁波・磁界からの被曝をまぬかれないこと

◆時代に逆行する、厖大な電力消費をともなう計画(新幹線の3~4倍)であること

◆すでに実験線が敷設されている甲府市では、空中を土管様のシールドが走るさまに、景観問題、騒音被害を問う声が高まっていること。現に、都留市の実験線沿線の住民からは、床下が持ち上がるような振動、やむなく電話を中断するほどの騒音公害が報告されていること

◆南アルプス直下を掘りぬく、着工したら取り返しがつかない計画に、長野では、周辺の希少動植物への多大な影響を危惧する声や、すでに登山道の崩落が進行中であり、深層部でも同様であることを危惧する学者らの意見があること

◆静岡では、JR東海自ら認知する、大井川流量減問題が深刻で、トンネルが水脈に当たれば、県下7市・63万人が実際に飲料としている大井川の湧水が、その水利権量と同量失われる可能性があること

◆予定ルートにウラン鉱床が存在する岐阜では、掘削により生じる新たな被曝問題が危惧されること

 

大田・生活者ネットワーク前区議の奈須利江が、東京の状況から問題提起

◆東京では、品川を起点に、大田・世田谷・町田などが予定ルートとされ、町田では、すでに12年度よりボーリングによる地質調査が開始。計画によると、地下40メートル~100メートルの大深度を通過。そのルート上には直径30メートルの立坑が510キロメートルおきに造られることになり、騒音・残土・電磁波問題などが危惧される(この日の集会に続く、225日の東京公聴会では、奈須利江が公述人として東京都に意見陳述)。 

――消費電力、生態系、残土、騒音、振動、磁界、教育福祉環境、景観、水…そのいずれをとってみても、JR東海による準備書内容はじつに杜撰で安直。電力消費、電磁波などその実数においても調査方法が明らかにされたとは言い難く、ほとんどの項目が「影響は小さい」「低減をはかる」といった結論で締めくくられている。このような準備書のもとに不要の事業を進めるのであれば、環境アセスは、変わらずただのアリバイづくりと言われてもやむない事態となっている。 

技術先進国ドイツでは、その問題性の多さからすでに放棄された技術:リニアモーターカー。このまま進めてよいはずがない。東京・生活者ネットワークは、「都知事意見」への反映を視野に、沿線住民やリニア関係団体との連携をはかりながら、東京都への働きかけを進めている。

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