米国生まれの詩人が語る原子力・核開発の本質 東京・生活者ネットワーク「2013新春の集い」――基調講演から

第1部講演動画   1月30日、東京・生活者ネットワーク「2013年新春の集い」が、中野サンプラザを会場に開催された。第1部基調講演では、「福は内! プルトニウムは外!」と題して、アメリカ生まれの詩人、アーサー・ビナードさんが登壇。戦争の世紀が、軍産体制が生み出した原子力と核開発の核心を、原発が廃絶されなければならないわけを、わかりやすく論説。続く第2部では、今年6月に迫った東京都議会選挙候補者、及び3月に実施される小金井市議選候補者が登壇、内外の参加者を前に、東京を市民が自治する生活都市に変えるために議席を勝ち取る決意表明を、力強く行なった。 

講演者のアーサー・ビナードさんを囲む、都議選候補予定者の6人。左から山内れい子(国分寺・国立)、西崎光子(世田谷)、星ひろ子(昭島)、小松久子(杉並)、奈須りえ(大田)、やない克子(練馬)

「日本は次のリオのオリンピックには参加しないらしい…」「それとも、参加しても1つもメダルを取るつもりはない?!」

アーサー・ビナードさんの講演は、いきなりこんな投げかけから始まった。そういえばオリンピック招致を啓発するポスターのキャッチコピーは、ロンドンオリンピックを受けて「この感動を次は、ニッポンで!」だ。確かに、多くの人は特段の疑問も抱かないでいる。

さらに、2020年のオリンピックは東京が選ばれるのでは、とも。3.11福島原発事故を契機に、世界中の人々が原発からの撤退を考え始めている。この動きを封殺するために、核・原子力問題に目がむけられる現状をリセットするために、東京オリンピック開催のシナリオが着々と進められているのではないか、と。

 言葉を取り返せ!   あきらめるな!  非暴力で社会を変えていこう

 さて、この日の講演の本題は「福は内、プルトニウムは外」。 

地球上のあらゆる生命体と相容れない核廃棄物が、プルトニウムが、無毒化する技術を持たないまま日々生み出されている。一握りの政治家と産業界のトップが、アメリカの言うなりに核の平和利用=原子力発電を推進してきた国が日本だ。ウラン採掘から濃縮に至る過程で要する資金は、そのままアメリカの核開発資金になる。アメリカは常に仮想敵国を想定し、軍事費に金を注ぎ込んできた。「鬼は外」と鬼を追い回すように…かつてはソ連、今は中国だろうか。

「原子炉」の英語は「Nuclear reactor」。直訳すると「核反応装置」であるが、私たちは特段の疑問を抱かず「原子炉」と認識させられてきた。「核の平和利用」という言葉とともに、1950年代当時の復興の象徴である製鉄所の溶鉱炉の、あるいは暖炉・囲炉裏の「炉」を連想させる言葉をすんなり受け入れてしまったのではなかったか。気がつくと、54基もの原発が建設されていた。日本が原発を維持していかなくていけない構図が見えてくる。

原子力と核開発の核心を語る、アメリカ生まれの詩人アーサー・ビナードさん

アメリカのマンハッタン計画と原爆、核開発の核心へと話は進む。「100万のアメリカ兵の命を救うため、已む無い投下だった」という2発の原子爆弾。戦争を早期終結するためと言われてきたそれは、実は米国の一部政府上層部が秘密裏に進めた核開発=マッハッタン計画に膨大な金をつぎ込んだことを隠蔽し、正当化するため。平和利用の名のもとに世界にばら撒かれた原発というシステムは、核兵器と同様、軍産複合体への莫大な利益誘導のため。ヒロシマに投下された原爆を「ピカドン」と呼び、その悲惨さを訴えてきた広島の生活者のように、生活者の言葉を使って「脱原発」を、「原発ゼロ」を訴えていかなければ。

硬軟取り混ぜて巧みに演出される政治。アーサーさんが発したのは言葉の大切さ、それを吟味することの重要さ。それは、とりもなおさず「政治は言葉である」という生活者ネットへのエールであると銘じ、暮らし発、生活者の課題を解決にむける政策集団の役割を果たす年としたい。

 生活者とつながろう  市民が自治するまち・東京をつくろう

 

新春の集い第2部で決意表明する都議選候補予定者6人と、小金井市議選候補予定者の2人田頭ゆう子(現職)と林とも子(新人)

 昨年の総選挙、同日に行われた東京都知事選挙を経て2013年の幕が明けた。国政では自民党が返り咲き、またぞろ土建型公共事業のばら撒きが復活。民主党政権が行ったすべてを否定することから国政運営がスタートしている。一方、今年は3.11以降初めてとなる東京都議選が6月23日に、また、直前の3月24日には小金井市議選が行われる。2013新春の集い第一部では、アーサー・ビナードさんによる基調講演を受ける形で、6人の都議候補、小金井市議候補が登壇。来る自治体議会選挙にむける決意を、2013都議選選対長の西崎光子[都議会議員・世田谷区]が表明した。

――私たちが、地道に地域で積み上げてきた活動や暮らし発ローカルから国政への提案、原発ゼロ政策…それらが後戻りされている。アーサー・ビナードさんは、「原発」と言ってはいけない、その正体は「じりじり原爆」と表し、ことの本質を見抜く重要さを語った。私たち都市生活者にとって、「原発問題は、他人事だったのではなかったか」と、改めて問われたのだと思う。度々の福島視察の折りに出会った、現実にそこで被曝している子どもたちや家族の今に思いを馳せると、被災地の再生と原発ゼロ政策の実現に、私たち都市生活者こそが力を尽くさねばならないのだと気持ちを新たにした。

一方、東京もまた、都市ならではの生活課題が山積している。昨年、東京都政を途中で投げ出した石原前知事に変わり、誰も想像していなかった猪瀬都政が誕生。430万もの票を集め、石原都政の後継を自任する新知事には、しかし、地域をていねいに知っているからこそわかる生活者の課題が、少子高齢化が進行する東京問題が見えているだろうか? 石原・猪瀬と続く東京都政のもと、しかし、私たちの足元の生活は何も変わっていない、あるいは自民党政権が豊かな地域社会を約束するのであれば、この間、私たちローカルパーティ・生活者ネットワークの出番はなかったはずだ。

必要なのは地域発、市民が参加する政治である。電力も食も、エネルギーの一大消費地である東京・ローカルからこそ変えていく、地域の課題を一番よく知っている生活者ネットワークが変えていく、東京を市民が自治する生活都市に変えていきたいと思う。それぞれの地域ネットのメンバーと、生活者ネットワークの53人の都・市・区議が力を合わせて、来る東京都議会議員選挙で、小金井市議選で必ずや、議席増を勝ち取ることから始めよう――

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