住民投票の目的は民主主義の本義「参加と自治」を取り戻すこと

公開討論会「みんなで話そう 原発都民投票」

5月10日、夕刻からは三茶しゃれなあどで、公開討論会「みんなで話そう 原発都民投票」が開催された(主催:原発都民投票公開討論実行委員会)。コーディネーターは、「みんなで決めよう『原発』国民投票」事務局長でジャーナリストの今井一さん。
飛び入り参加の保坂展人世田谷区長からは「これまでエネルギー問題は出す側、作る側の問題とされ、使う側の意思、声、選択がなかった。民主主義の問題だ。日本全国が現場であり、地元である。3・11を転換のエポックにしていけるか。一人一人が考えることが大切」と原発都民投票へのエールがおくられた。

宮台真司さん(首都大学東京教授)は「住民投票の目的は民主主義の本義を取り戻すこと。日本では民主主義が多数決、多数派政治と間違って理解されている。民主主義の基本は参加と自治。なぜ原発事故の後このことが問題となるかははっきりしている。日本は『原発100%安全神話』を信じてきた世界で唯一の国。政治家・東電・学者・マスコミに任せきりにしてきたつけが原発事故となった。住民投票は世論調査による決定ではない。公開討論会やワークショップなどを通じて情報が公開され、様々な立場の専門家の意見も聞き、最後は専門家ではなく住民が決定するしくみ。医療のインフォームドコンセント、セカンドオピニオンと同じ。討議を通して知らなかったことを知り、もともと持っている考え方を変えることができる。住民の民度が上がることによって議会も変わらざるを得ない」と住民投票の意義を力説。

都議会議員124人のうち、当日出席は、生活者ネット・みらいの西崎光子、山内玲子、星裕子、共産党の吉田信夫さん、田副民雄さん、民主党の泉谷剛さんの6人のみ。

ネット・みらいの星都議は「原発の稼働をどうするかは国民すべての争点だが、選挙では争点になっていない」と住民投票を行う必要性を強調。山内都議も「市民の参加は時間もお金もかかるが、原発について一人一人が考えていくチャンスにしたい」
泉谷都議は「民主党は住民投票法をつくると政策集INDEX2009に明記、党の方針は間違っていない。区議時代、清掃工場問題で自分たちの調査と役所の情報が全く違うことを経験。こうした経験をもとに戦っていきたい」
共産党からはかつて臨海副都心問題でネットと都民投票条例を議員提案した経緯にふれ、賛成する立場で頑張りたいと表明。

住民投票で何が変わったのか
1996年、新潟県巻町での「原発設置のための町有地売却の是非を問う」日本初の住民投票から各地で広がる住民投票。長野県佐久市議の小山仁志さんは「総合文化会館の建設の是非を問う住民投票」(2010年11月)を報告。結果は反対が賛成を大きく上回り、市長は建設を中止。箱モノを作ることを進めてきた議会に住民が待ったをかけた。それは住民投票条例により情報の提供が担保されたことが大きく寄与している。市民は熟慮し、当事者意識を持って投票した。

全国で初めて永住外国人に住民投票資格を与える住民投票条例を制定した滋賀県愛荘町長村西俊夫さんは、電話で参加。この住民投票は村西さんが米原町長時代に市町村合併問題を問うものだった。

永住外国人に投票権を認めているのはなぜか?
村西さんは「永住外国人は住民であり、税金も納めている。一緒に生活している人の声を聴くのは大事。地域の住民として決定に参加していくことは当然」。その後、各地の合併問題についての住民投票では7割ぐらいが永住外国人の投票権を認めている。

16歳以上に投票権
日本の若者の政治参加が進まないといわれるが、世界では18歳選挙権が主流。少年法改正などとの整合性を考えるべきとの会場からの意見に対して、原発問題では健康上大きな影響を受ける子どもたちが決定に関与する資格がある、運動を通じて意見表明の機会がほしいという高校生の声に感銘を受けた、政治に関心を持つには時間がかかる、早いうちから参加の機会を作る必要がある、などの意見が出た。

今回の都民投票直接請求運動をサポートした斉藤ニコラスさんはこの春高校を卒業したばかり。永住外国人として参政権のない父親のくやしさも身近で感じてきた。自治体選挙は自分の生活にかかわることで、住民の一人である永住外国人にも参政権があるのは当たり前だと考えてきた。
宮台さんは永住外国人が増えていく日本の現状を認識し、排除して疑心暗鬼の不安な社会をつくるのでなく、ともにワークショップや討論会に参加、体験を通して共同性をつくりあげることが行政のコストを下げる意味からも重要ではないかと発言。

これまで東京電力や国が決定してきた「原発」の稼働。電力の消費地である東京で、市民がきちんとした情報公開のもとで議論し、判断し、意思を表す機会となる、「原発」都民投票条例の議論がようやく都議会で行われる。
西崎都議は「本日都民が直接請求を出したことをどう受け止め議論していくか、都議会が問われている。議会での議論を、緊張感をもってすすめていくことに力を尽くす」と発言。

大事なことは市民が決める! 政治を市民の手に取り戻すために、生活者ネットも市民とともにさらに活動を広げていく。

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