講師に田中三彦さん、中手聖一さん、小出裕章さん〜核・原子力のない未来をめざす市民集会 開催される〜

3.11原発震災以降を私たちはどう生きるか〜

3.11東京電力福島第一原発事故から半年となる8月27日。「第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会 @台東」が開催された(於:都立産業貿易センター台東館)。この日の講師は、サイエンスライターの田中三彦さん、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表の中手聖一さん、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん。
主催は「核・原子力のない未来をめざす市民集会実行委員会」。加えて、「原子力資料情報室」と「東京・生活者ネットワーク」が協賛。第1回目(@練馬)から数えて、ちょうど1年6カ月目の、この日の全体テーマは、「3.11原発震災以降を私たちはどう生きるか」。 
未だ収束しない原発震災事故を巡って、情報隠し、情報操作が顕著な中、私たち市民の拠りどころとなる発信を続けている三人の演者の言葉に700人超の参加者が耳を傾けた。また、急きょ会場に駆けつけた、元原子炉格納容器設計技術者である後藤政志さんがコメントされる場面もあり、4時間半にわたる集会は盛会のうちに終了した。

—SESSIONⅠでは、まず、サイエンスライターの田中三彦さんが登壇。
「福島第一原発事故で何が起きたか?」。田中さんは、流布されているような、津波と電源喪失を主要因に早い時期にメルトダウンが起こったとする、東電のシミュレーション解析は、「地震動」の影響を無視し問題の本質を隠した「悪しきシミュレーション・騙しのテクニック」だ、と言わざるを得ない。メルトダウンは誰の目にも明らかであると前置きし、問題は、地震の揺れで原発の中枢構造が壊れたり、機能が喪失した——つまり、配管破損による冷却材喪失事故が起きた可能性が大であることだ、「耐震脆弱性」こそが問われなければならない、と指摘した。
さらに、1〜5号機が採用している原子炉格納容器に言及。MARKⅠ型と呼ばれるこれら原子炉格納容器は、圧力抑制室の耐震脆弱性や構造強度問題、圧力抑制機能の喪失が容易に起こる危険をはらんだ欠陥格納容器であることが指摘されていた。最大のなぞとされてきた「格納容器の圧力はなぜ上昇したか」の答えがここにある!と、地震発生から水素爆発に至る1号機事故の全容をシミュレーションした。
MARKⅠ型の格納容器を設置している原発はもとより、地震動による機器の損傷破壊が濃厚な今、全国にある54基の原発を即時停止すべきと結論。
原発はなぜ危険か。元原子炉圧力容器設計技術者の、自らのデータ解析を根拠に語る推論、事故の真相に、会場は何度も戦慄した。

原発被災地・福島からは、中手聖一さんが参加された。
中手さんはまず、今なお放射線管理区域のようなところで暮らしている福島の子どもたちの困難な現状を報告。「視えない敵」と放射能を指して言うが、視えない敵は放射能だけでない、この国を変えないと一度事故が起これば、私たちはあっという間に犠牲者にされる。それが福島で起こっている。そして、放射能はすでに福島を超えた。今後なすべきは「1ミリシーベルト以上の汚染区域は選択的避難支援の対象にする避難区域の拡充」であり、これを政府に問わねばならない。福島を超えて、皆さんと手を携えて求めていきたい、とアピールした。

—SESSIONⅡは、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんの講演。
「核=原子力の本質 原子力発電で、私たちが知っておきたいこと」と題し、核分裂反応をエネルギーに転換する原子力発電の危険性、都市部を避け、危険を過疎地に押し付けてきた原発立地の現状、ウラン採掘から始まる被曝問題、差別の上にしか成り立たない原子力発電…と進め、人類にとって、あらゆる生命体と相容れない原子力と今度こそ決別すべきと結論した。
さらに小出さんは、「日本が原子力を諦めない本当の理由」に言及。「もんじゅ」をあきらめないのはなぜか? 理由は高純度、核分裂性のプルトニウム(長崎型の原爆材料)にある。核兵器を開発する能力を保持したいがためである。原子力に「平和利用」も「軍事利用」もない、あるのは「平時利用」と「戦時利用」だけだと、続けた。つまりは、技術を手にしてしまえば、いつでも軍事に転用できるということだ……。
日本で原子力発電が始まって以降、原発は6兆キロワット/時を超える電力を生み出した。しかし、その裏で同時に生み出された核分裂生成物、核のごみの総量は広島原爆110万発分に相当する! 「仮に、日本人がこれらに等しく責任を負うとすれば、150人で1発の原爆に責任を負うということだ、この会場だけで、広島原爆5発分だ」、いったいどういうことか、そして、その核のごみは、3.11原発事故が収束しない今なお、どこかの原発で、絶えず生み出されている……核・原子力をめぐる本質的な問題がそこにある。
多くの日本人は核=原子力の真実を知らされないまま、知ろうとしないまま今日まで暮らしてきた。そして事故は起きてしまった。3.11以降、変わってしまった世界で、私たちはどう生きるか、問われているのはそのことだ。

講演を結ぶあたり、小出裕章さんが発した、「原子力を選んだことに責任のない子どもたちを放射能から守りたい。皆さんの知恵と力を貸してほしい」という問いかけに、私たちはどう応えたらよいのだろうか。

私たちは、広島、長崎の原爆を経験し、さらに福島原発事故による核・原子力の被害を経験した。そして、これから永続する放射線被曝の影響をもっとも多く受けるのは若者、子ども、乳幼児、まだ生まれていない次世代の子どもたちだ。核=原子力を選択し、それを許してきたのは私たちおとな社会だ。これ以上、人類が原発による惨禍を繰り返さないように願うなら、核兵器を廃絶したいと考えるのであれば、日本にある54基の原発を廃炉にすることから始めねばならない。<報告:広報室 加藤千鶴子>

さようなら原発1000万人アクション http://sayonara-nukes.org/
みんなで決めよう!「原発国民投票」http://kokumintohyo.com/
eシフト:脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会 http://e-shift.org/

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