消費者自らが食問題に取り組むべき時

 11月19日、 「食料の自給率向上について」 と題して、 生活クラブ生協連合会会長の加藤好一さん(写真)を講師に招き、 東京・生活者ネットワーク政策委員会学習会を緊急開催しました。
 食料の需要や価格高騰の問題は今や国際的に構造化しており、 国内外を問わず、 食をめぐる危機的状況が現実のものとして迫っています。食の安全保障政策の重要性と緊急性をあらためて確認しました。

 農水省の 「食料需給表」 によるカロリーベースでの食料自給率の対比によれば、 日本は1965年からの25年間で、 穀物、野菜を中心とする供給から、 輸入物を主流とした畜産物や油脂類の供給に大幅に変化しました。 食生活の変化は、 世界人口約65億人のうち、 約半分を占めるBRICs諸国 (ブラジル、 ロシア、 インド、 中国)も同様で、 畜産物や油脂類の食料需要は高まる一方です。 そのうえ、 アメリカではバイオエタノール生産の拡大がトウモロコシの国内需要を増やし、 アフリカ諸国などを中心とした飢餓地帯を拡大しています。 さらに、 飼料の値上がりが食料の高騰を招く中、 今後、 遺伝子組み換え作物の生産にも拍車がかかることが大きく危惧されます。
 
 我が国においては、 40%以下の食糧自給率の現状に加え、 畜産むけ飼料もアメリカ頼みの実情は、 昨年以降の食品の小売価格値上げのみならず、 酪農家の経営危機を招いています。 農政の失策による営農者の所得減は深刻で、 後継者も育たず高齢化は進む一方で、 食料輸入に依存する日本の食の安全・安心が大きく揺らいでいます。

 生活クラブ生協は 「素性の確かなものを、 適正な価格で」 をモットーに、 菜種、 米、 ニワトリなどの国産種を守るための取り組みとともに、 1997年からは、 NON GMO (非遺伝子組み換え) 運動を継続的に展開しています。生活者ネットも都議会、各地域議会において、NON GMOの取り組みをすすめてきました。
 また、同生協は共同購入運動を通して第一次産業のあり方を問い続け、 食料争奪時代到来の中にあって 「奪わない食」 をめざし、 食料自給率向上と食の安全保障を問う政策提案運動を、 来る衆院選を視野に展開しているとのことです。

 9月の都議会で、 事故米の不正流通に関する意見書や、 生活者ネットが提案した食料自給率向上をめざす国への意見書が、意見の一致を見ず提出できなかったことは、 非常に残念でした。 国政選挙が近いからとはいえ、 党利・党略を優先するようでは、 都民・消費者の立場に立つ議会とはいえません。
 立川東村山の生活者ネットが、9月議会で提案した同様の意見書は採択され、さらに各地の生活者ネットが、 12月議会にむけ意見書提出を提案していく予定です。
 
 自然の恵みとしての食料から工業製品と化した食料は、 結果、 市場万能主義に陥り、 農薬や添加物の乱用、 偽装表示など、 食品を取り巻く不正を数限りなく生みだしてきました。 消費者自らが、 生き方の問題として、 食の問題に取り組むべき時です。
 私たちは粘り強く活動を続け、 「食品安全条例制定」を求める直接請求から10数年の時を経て、2004年、東京都に「食品安全条例」を成立させました。 これらの活動をふまえ、市民とともにあるネットワーク運動をさらに広げ、食の安全の確立にしっかり取り組んでいきます。

東京・生活者ネットワーク 代表
東京都議会議員 山口文江

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