至れり尽くせり型から、暮らし育み型へ

特別養護老人ホーム「風の村」・・・千葉

日野市議会議員 出沼恵美子
日野・生活者ネットワーク

 厚生労働省は2003年4月、今後建設される特別養護老人ホーム(以下特養)について、全室個室・ユニット型の新型特養の原則化を打ち出した。特養「風の村」は、生活クラブ生協・千葉が構想。5年の準備期間を経て2002年2月開設。以来ユニットケアのさきがけとして全国から注目を浴びている。オープンから1年半を経過した「風の村」をネットメンバーが訪ね、成果と課題を追いました。

個室・ユニットケアのさきがけ

 「住んでもよいと思える施設」は、言い換えれば自分の家と思える施設のこと。その行き着いた先が、全室個室・ユニットケアというスタイル。
 中央のリビングを囲んだ6〜9室の個室を配置したユニットがコミュニティの最小単位。ユニットごとに入居者と職員が家族のように日々の暮らしを営み、ひとり一人の生活のペースを大事にし、起床・就寝時間の決まりもなく、外出も自由。
 入居者同士のトラブルもあるが、そのつど話し合いによって解決している。
また、県内の4施設と連携し、入居者、利用者の権利擁護を目的にオンブズマン制度をスタートさせ、訪問相談員が相談にあたっている。

市民協働でスタートして1年半

 「風の村は痴呆の人は少ないのですね」との感想を多くの見学者が持つようだが、実際は入居者の8割が痴呆性高齢者である。暮らしのなかで快方にむかうケースが多いため、そのように見えるようだ。
 「風の村」の最大の特徴は、ボランティアが大きな力を発揮している点だ。運営主体である社会福祉法人「たすけあい倶楽部」設立準備期間から同時進行で「たすけあい倶楽部を支える会」(以下支える会)がつくられ、1口1か月200円で寄付を募り、現在は2000人以上の会員が趣旨に賛同している。
「風の村」入居者は、仮の住まいという思いから次第に終の棲家として「最後までここで」と望む人が増えている。
 施設から居宅サービスへの転換をめざして始まった介護保険だが、重介護度の人ほど自宅での介護に限界があるのが実情だ。ゆったり安心して暮らせる「風の村」への入居希望者は現在「350人待ち」。身近な地域に小規模単位の施設が広がっていくことが今求められている。

〔写真下〕2階の交流スペースにある観葉植物や金魚の飼育水槽は、入居者がくつろげるようにという職員の発案から置かれたものです。(「水槽はだれが世話するのか」などの議論もありましたが、職員の意識も変わってきました。)

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