カーフリーのまちづくりをめざして

政策委員会環境部会
交通チーム

 日本では、高度成長と共に、交通需要が年々増加を続けてきました。具体的な数字を見てみると、旅客においては、1965年にはわずか10%に過ぎなかった自家乗用車の割合は1996年には約30%と半減、1965年には約20%を占めていたバスが1996年には約7%に減っています。また、貨物についても1965年には約25%に過ぎなかった自動車の割合は、1996年では約50%と劇的に増加しています(「運輸経済統計要覧 平成9年版」より)。
 日本の自動車密度(国土面積当たり保有台数)は、欧米の水準を上回り、輸送分担率も、旅客・貨物とも年々自動車の占める割合が高くなっているのが現状です。特に、都市部では道路建設を繰り返しても渋滞が慢性化し、狭い国土でこれ以上自動車依存は不可能です。東京都のような過密都市では、中心市街地が発達し、周辺には広大な住宅地をかかえています。電車、地下鉄、バスなどの公共交通機関が十分に発達しているものの、通過交通でなく地域業務、物流などの自動車利用が多く、慢性交通渋滞に悩まされています。

 そうした中、東京都は1999年に「ディーゼル車NO作戦」や「自動車使用に関する東京ルール」を策定しました。2000年2月には、交通需要マネージメント(TDM)東京行動プランを発表し、具体案の一つとして、都心に入る車から料金を徴収する「ロードプライシング」制度の2003年までの実施を目指すことを打ち出しました。しかし、都市計画道路の整備率は1997年度末の東京全体で50.2%程度にとどまっているものとし、区部の環状新幹線道路、多摩地域では南北新幹線道路の整備をすすめるなど道路容量拡大策をすすめる方向です。
 そして、国は地球温暖化対策の一つとして道路整備を挙げ、渋滞緩和で二酸化炭素排出を削減するとしていますが、これは適切な温暖化対策であるといえるでしょうか。
 莫大な公共事業によりすすめられる道路整備は、渋滞が一時的に改善されても、潜在需要が顕在化し、再び渋滞がおきることが予想されます。そして、車中心の社会によって、地球温暖化問題、公害問題、自然環境問題、交通事故問題など多くの問題も引き起こしています。
 また公共交通機関の充実は、自動車交通量の調整や抑制に繋がると考えられ、公共交通機関は生活するうえで重要な役割を果たしています。しかし、駅の階段や道路の段差など利用しにくい状況を解決しない限り本来の役割を果たしているとはいえません。
 そこで、これまで行われてきた「車中心の社会」のための交通対策や道路整備などの交通政策から、「人中心の社会」を目指した交通政策への転換が求められています。そして、都心居住や職住近接をすすめるなどによって交通需要を減らすなど環境負荷を少なくし、エネルギー抑制につながることをめざし、誰にとっても暮らしやすい東京をつくるための交通政策の具体的提案をします。

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