「すこやか宣言」では子どもの権利は保障されない

八王子市議会議員 平岡 晴子
八王子・生活者ネットワーク

 昨年策定された八王子市の「児童育成計画」では、子どもの権利条約の精神を尊重し、子どもたちが自主性・自立性を持って可能性にチャレンジすることのできる環境整備を進めるため、「子どもの権利宣言」を行うことが盛り込まれました。

 これに沿って市の児童課では、小学生・中学生・高校生それぞれの代表からなる子ども委員8名と、おとな委員として校長会・青少年対策委員会・PTA連合会・人権擁護委員会などからの代表10名で構成する「子どもの権利宣言検討委員会」を発足させ、宣言文の内容について検討会を中心に議論を重ねた上で文案を決定しました。

 ところが、市長・助役・教育長・各所管の部長で構成する政策会議を経て最終的に決定した文案は、タイトルが子ども権利宣言からすこやか宣言に変わり、内容そのものも大きな変更が加えられたのです。例えば「子どもが意見を言うことができることや、大人が子どもに自分の意見をわかりやすく説明することを大切にし、子どものプライバシーを尊重するとともに、子どもが必要とする時間や安心していられる場所を保障します」としていた部分が「わたしたちはしっかりと自分を表現し、自分の意見や行動に責任を持ちます」「わたしたちは安心して生活できる家庭を望みます」となり、当初の案になかった「がまんすることの大切さを理解するとともに好きなことに夢を持ち、元気に暮らします」という文も加わり、大人の責任にはふれず、子どもが元気に暮らすこと・夢を持つこと・がまんすること・責任を持つことを一方的に宣言させる内容になりました。

 これに対し、私たちは「すこやか宣言は子どもの権利宣言として受け止めることができない。子ども達は未来に夢をもち、安心していきいきと暮らす権利があるということを保障する社会をいっしょにつくっていこうと、市民全体が宣言する内容にするべきではないか。」と主張してきましたが、市長は「今の子どもたちは欲しいものは何でもすぐに与えられ、我慢することを知らないのですぐキレる。このような状況を考えたとき、かえって権利という言葉はなじまない。」と答え、子どもの権利についての根本的な認識の違いが明らかになりました。しかし、一方で児童育成計画に沿って子どもの権利条約の精神を尊重した施策の展開を求めたところ、福祉部長の答弁は「子どもの施策については子どもの権利条約に沿って進めていきたい」というもので、市長と異なるものでした。

 八王子では、東京都に子どもの権利条例を制定する請願活動を通じて、「子どもの権利を守るしくみをつくる会」という市民グループが立ち上がっています。今後、市民とともに子どもの権利が尊重される施策の推進を求めて活動していきたいと思います。

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