人間らしい働き方◆提案します!地域から

政策委員会学習会・今「労働」は何が問題なのか

 雇用・労働環境の多様化、公共サービスの担い手の拡大など、働く環境は大きく変化しています。「安心して人間らしい生活ができる働き方の確立」を提案するために、改めて「労働」の現状を問い直す学習会を開催しました。
 講師は自治労中央執行委員(組織局次長)の相原久美子さん。札幌市の非常勤職員として働き、主に非正規雇用の処遇改善の運動に関わってきた経験をもとに、公共サービスの現場の問題をお話しいただきました。
 
〔講演内容〕 
 自治体には約40万人の非正規の職員がいるといわれている。1950年にできた地方公務員法の中で、正規職員の行なう“恒常的・機関的業務”以外を担うために規定された臨時職員、非常勤職員は、当時6ヶ月か1年間の勤務しか想定していなかった。その後の行革による公務員定数の削減や市民ニーズの多様化を背景に、役割も人数も増えていったが、労働者としての権利などが充分議論されないまま、賃金格差や労働環境など多くの問題が残されている。
 民間でも、特に介護事業所における非正規雇用、登録ヘルパーの問題に象徴されるように、拘束時間が賃金になかなか反映されないなど、問題が山積している。介護の社会化を掲げ導入された介護保険制度も含め、福祉関係の仕事は経験が重要視されるが、現実には職場の定着率が非常に悪い。
公共サービスを民間に委ねる場合も、経営者は入札競争のためにコストを削減し、結果的に賃金のダンピングと雇用不安の形で労働者にしわ寄せがいっている。この入札制度の課題は、指定管理者制度の導入によってさらに増大。民間を否定するわけではないが、こうした現状が公共サービスの内容・質そのものに影響を与えていることも合わせ、公共サービスを担う労働の実態を考える必要がある。
少なくとも、税金を投入する公の仕事を民間に委ねる場合は、一定の水準をつくり、その基準をクリアしたところに委託をする“公契約条例”の仕組みが必要である。入札の総合評価方式の活用も合わせ、障がい者の雇用率や関係法令の遵守などのハードルを設けることで、一定程度の労働環境の改善は期待できる。
公共サービス論がないままに、サービスの民営化・切捨てが進むことは問題。非正規労働を担っているのは圧倒的に女性が多く、労働問題は人権問題。公正労働基準や均等待遇原則を確立し、公共サービスにおけるセイフティーネットを作ることによって、社会全体の労働の問題も、浮き彫りにしたい。

 東京・生活者ネットワークは、労働に関する調査活動を行ないました。働く側の事情に応じた多様な働き方(適切な社会保障と労働条件を確立した人間らしい働き方)を、どのように地域で実現するか、地域における新しいワークルール「身近な地域から労働環境を改善し、安心して人間らしい生活ができる働き方の確立」を提案しています。
 この日の学習会では、「介護や子育てなどのケアワークは、社会が担うべき“公共労働”と位置付け、最低賃金保障や社会保障の付加、研修の保障などを行なう」というネットの政策の背景にある自治体労働の現場を知ることができました。今後のパート労働法の改正論議も注視しつつ、労働環境の底上げにつながる提案を地域から発信する必要性を感じた学習会でした。

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