基本政策・参考資料

基本政策・参考資料

1. 一括交付金制度…民主党政権下で提案、地域の自由裁量を拡大するため、「地域主権戦略大綱」(2010.06.22閣議決定)等に基づき、各府省所管の都道府県向けの投資に係る補助金等の一部を内閣府予算として一括計上、地方自治体が自主的に選択した事業に対して交付金を交付する「地域自 主戦略交付金」が2011年度に創設された。ひも付き補助金の一括交付金化は、地方の自由度の拡大、効率的・効果的な財源の活用として期待されたが、実際には対象範囲の狭さや自治体のニーズとのミスマッチなどの課題も指摘。現政権は、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(2013.01.11閣議決定)を踏まえ、2013年度に地域自主戦略交 付金を廃止、各省庁の交付金等に移行、ひも付きに逆戻りしている。

2. 官制ワーキングプアの現状…自治労の実態調査によると、自治体で働く臨時・非常勤職員は全国に約70万人。自治体職員の3人に1人は非正規で、どの自治体も急増。消費生活相談員や保育士のほか、市民サービスの第一線で働く学童指導員、 図書館職員など女性職場に目立ち、女性の問題とも言える。2カ月ごとに雇用契約と解雇を繰り返す東京都の臨時職員制度では、多くの女性が長期間働いても社会保険に加入できない不安定な状況に置かれているとして、市民団体「ワーキング・ウイメンズ・ネットワーク」が「憲法が禁じる性差別」 に当たると 国連自由権規約委員会へ報告している。 また、自治体の事業を民間企業などに委託する際の契約(公契約)で、働く人の雇用・労働条件を守り、市民がよりよい公共サービスを受けられるようにするための「公契約条例」を制定する自治体も少しずつ増えてきている。

3. ディーセント・ワーク(働きがいのある人間ら しい仕事)…概念は第87回ILO総会(1999年)に提出された事務局長報告において初めて用いられ、(1)雇用の促進、(2)社会的保護の方策の展開及び強化、(3)社会対話の促進、(4)労働における基本的原則及び権利の尊重、促進及び実現 の4つの戦略的目標を通して実現されると位置付けられている。男女平等及び非差別は、これらの目標において横断的な課題。日本では、2012年7月に閣議決定された「日本再生戦略」において ディーセント・ワークの実現が盛り込まれている。

4. 短時間公務員制度…地方公共団体は「任期付職員法(地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律)」の規定に基づき、条例で定めれば、 任期付職員の採用を行うことができる。任期付職員法は、高度の専門性を備えた民間人材の活用等の観点から、専門的知識経験等を有する者等の採用を行う特例法として制定、2004年の改正で、一定の期間内に終了することが見込まれる業務のための規定(4条)とともに、サービスの提供体制の充実や部分休業を取得する職員の業務の代替を要件とする「任期付短時間勤務職員」(5条)の規定が加えられた。つまり、現行でも「任期付き」なら短時間勤務制度はあるが、ネットが政策提案しているのは、「ワークシェア」の視点で、同一価値労働・ 同一賃金を前提とした「短時間公務員」制度である。

5. 子育て新制度…2012年8月に成立した「子ども・子育て関連3法(「子ども・子育て支援法」、「認定こども園法の一部改正」、「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)に基づく新システム。ポイントは以下のとおり。
①認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(⇒施設型給付)、及び小規模保育等への給付(⇒地域型保育給付)の創設
②認定こども園制度の改善
・幼保連携型認定こども園は、認可・指導監督を一本化し、学校及び児童福祉施設として法的に位置づける。
・認定こども園の財政措置は「施設型給付」に一本化。
③地域の実情に応じた子ども・子育て支援(利用 者支援、地域子育て支援拠点、放課後児童クラブなどの「地域子ども・子育て支援事業」)の充実
・教育・保育施設を利用する子どもの家庭だけでな く、在宅の子育て家庭を含むすべての家庭及び子どもを対象とする事業として市町村が地域の実情に応じて実施。
④基礎自治体(市町村)が実施主体
・市町村は地域のニーズに基づき計画を策定、給付事業を実地。
・国・都道府県は実施主体の市町村を重層的に支える。
⑤社会全体による費用負担
・消費税率の引き上げによる、国及び地方の恒久財源の確保を前提。
⑥政府の推進体制 ・制度ごとにバラバラな政府の推進体制を整備(内閣府に子ども・子育て本部を設置)。
⑦子ども・子育て会議の設置
・有識者、地方公共団体、事業主代表・労働者代表、 子育て当事者、子育て支援当事者等(子ども・子育て支援に関する事業に従事する者)が、子育て支援の政策プロセスなどに参画・関与することができるしくみとして、国に子ども・子育て会議を 設置。
・市町村等の合議制機関(地方版子ども・子育て 会議)の設置は努力義務。
⑧施行時期:2015年4月に本格施行の予定 ※幼児教育・保育・子育て支援の質・量の拡充を 図るためには、消費税率の引き上げにより確保する0.7兆円程度を含めて1兆円超程度の追加財源が必要とされている。しかし、消費税率を8%に据え置いた場合、政府が消費税増税によって確保するとしている子育て支援の財源0.7兆円に対し、0.3兆の不足が2015年度に生じることが厚生労働省の試算で判明している(2014.09)。税率 5 → 8%の増収分から、子育てには0.4兆円強しか回せないためとしているが、財源不足を 10%引き上げへの理由にしてはならない。

6. 児童虐待の現状…全国の児童相談所での児童虐 待に関する相談対応件数は、児童虐待防止法施行前の1999年度に比べ、2012 年度は5.7倍に増加
(66,701 件)。虐待による死亡事例件数は、高い水 準で推移している。子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第10次報告)によると、2012年度は、虐待死事例の総数 78例(90人)、 うち心中以外の虐待死49例(51人)、心中による 虐待死 29例(39 人)。

7. 子どもの放射線被ばく…2011年3月11日の東日本大震災に続く原発事故は、子どもたちの未来 に暗い影と深刻な爪痕を残した。2012年6月に「子ども・被災者支援法(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律)」が成立したが、プログラム 法案であり、実効性が課題として指摘された。放 射線による健康への影響に関する調査(定期的な 健康診断等)も規定されたが、政府は、外部被曝・内部被曝に対する抜本的な手立てを講じていない。 福島県の甲状腺検査(対象:事故当時18歳以下の子ども)の結果(2014.06.30現在)では、受診 した30万人のうち、104人が甲状腺がんやその疑 いと判定された(穿刺吸引細胞診を行った子どものうち104人が悪性ないし悪性の疑いと判定)。た だし県は「被曝の影響とは考えにくい」としている。

8. 教育再生の動向…2012年12月に発足した第二次安倍内閣は、第一次政権時の「教育再生会議」を復活させる形で「教育再生実行会議」を設置。 第 1 回(2013.01.24)の冒頭挨拶では、「教育再生は、経済再生と並ぶ日本国の最重要課題であり、「強い日本」を取り戻すためには、日本の将来を担っていく子どもたちの教育を再生することが不可欠。 教育再生の最終的な大目標は、世界トップレベル の学力と規範意識を身につける機会を保障すること(以下略)」と、意気込みを語っている。「教育 再生実行会議」は、これまでに第1 ~ 5次の提言 を取りまとめている。①いじめの問題等への対応 について(2013.02)、②教育委員会制度等の在り方について(2013.04)、③これからの大学教育等の在り方について(2013.05)、④高等学校教育と 大学教育の接続・大学入学者選抜の在り方につい て(2013.10)、⑤今後の学制等の在り方について(2014.07)。

9. 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一 部を改正する法律…教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保し、地方教育行政における責任の 明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連 携強化を図り、地方に対する国の関与の見直しを 図るため、地方教育行政制度の改革を行うもの。 柱は、①教育行政の責任の明確化、②総合教育会 議の設置、大綱の策定、③国の地方公共団体への 関与の見直し。2015年4月1 日施行。

10. 教科書検定基準見直し…教科用図書検定調査審議会は、検定基準の社会科固有の条件について、①未確定な時事的事象について記述する場合に、 特定の事柄を強調し過ぎていたりするところはな いことを明確化、②近現代の歴史的事象のうち、 通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示さ れているとともに、児童生徒が誤解しないように することを定める、③閣議決定その他の方法によ り示された政府の統一的な見解や最高裁判所の判 例がある場合には、それらに基づいた記述がされ ていることを定める-とした(2013.12.20)。  さらに文部科学省は、中学社会科と高校の地理 歴史、公民について、教科書を編集する際や学校での授業の指針となる学習指導要領の解説書を改訂、全国の教育委員会などに通知、竹島や尖閣諸島を「日本の固有の領土」と教えるよう求めている。
(2014.01.28「中学校学習指導要領解説」及び「高等学校学習指導要領解説」の一部改訂について)。

11. 道徳の教科化...教育再生実行会議の第一次提言(2013.02)等を踏まえて文科省が設置した「道 徳教育の充実に関する懇談会」は「教育課程において、特別の教科として位置付ける」等と報告
(2013.12)。それを受けて、文科省は「教育課程 部会 道徳教育専門部会」に「道徳に係る教育課程 の改善等」について諮問、部会では「道徳の時間 を教育課程上「特別の教科道徳」(仮称)として新たに位置付け、その目標・内容等を見直すとともに、「特別の教科道徳」を要として学校の教育活動全体を通じた道徳教育が真に充実したものとなるよう、教育課程の改善が必要」と答申案がまとめられた(10 月に答申、それを受けて文部科学省は2014年度中に道徳に関する学習指導要領の 改定案を提示、早ければ 2018 年度からの実施を目指すとしている)。

12. いじめ対策…国では「いじめ防止対策推進法」 が成立(2013.06)。東京都は「いじめ防止対策推 進条例」を制定、条例に基づき、「東京都いじめ防止対策推進基本方針」及び「東京都教育委員会い じめ総合対策」を策定した(2014.07)。また、東京都教育委員会は「いじめ総合対策(いじめに関 する専門家会議報告)」や「いじめ問題に関する研 究」の内容を踏まえ、授業や教員研修で活用できる実践例を「いじめ問題に対応できる力を育てるために-いじめ防止教育プログラム-」としてまとめている(2014.02)。学習プログラムは、いじめを傍観しない基盤づくり・いじめを生まないた めの互いの個性の理解など、教育研修は、いじめの未然防止に向けた学校の対応・早期発見のための情報共有の工夫。  特定非営利活動法人湘南DVサポートセンター は、2006年に「いじめ防止」や「デーティング・ バイオレンス防止」など、10 代の子ども向けプログラムを開発し、小・中・高校・大学で暴力防止教育を行っている。

13. 不登校の状況…学校基本調査によると、2013年度の長期(30日以上)欠席者のうち、「不登校」 を理由とする児童生徒数は、小学校で2 万4千人(前年度比+ 3千人)、中学校は9万5千人(同 + 4千人)。東京都では、小学校 2407人、中学校 8117人。東京都の「児童・生徒の問題行動の実態について」によると、2012年度の不登校数は、 小学校1912人、中学校 6469人、高校は全日制1093人+定時制 3600人。

14. フリースクール…「教育再生実行会議」(首相の私的諮問機関)は第5次提言「今後の学制等の在り方について」(2014.07.03)で、「生徒の学習ニーズに対応した教育の多様化・特色化が重要」とし、「フリースクールやインターナショナルスクールなどの学校外の教育機会の現状を踏まえ、その位置 付けについて、就学義務や公費負担の在り方を含め検討。また “ 夜間中学 ” の設置を促進」と提起した。安倍首相は、東京シューレを視察(2014.09)。 文科省は「フリースクール等プロジェクトチーム」 を設置、2015年度の概算要求では、フリースクー ル等に関する調査研究 1 億円を計上している(フ リースクール等に関する検討会、学校復帰や社会復帰を支援しているフリースクールを含めた学校外の不登校支援施設 ・ 機関による指導体制等の在り方に関する先進的調査研究の実施18カ所)。

15. 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育 システム構築のための特別支援教育の推進…障がい者権利条約批准に向けた体制整備(障がい者制度改革)において、教育分野では、障がい者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえた教育制度の在り方やそのための具体的方策等について、中央教育審議会(特別支援教育の
在り方に関する特別委員会、合理的配慮等環境整備ワーキンググループ)で検討が行われた。取りまとめ「共生社会の形成に向けたインクルーシブ 教育システム構築のための特別支援教育の推進」 (2012.07.03)では、「共生社会の形成に向けて、 障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり、その構築のため、特別支援教育を着実に進めていく必要がある」と明記、①共生社会の形成に向けて、②就学相談・就学先決定の在り方について、③障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的 配慮及びその基礎となる環境整備、④多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進-が柱。  障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶしくみとしての「インクルーシブ教育システム」の 意味や、「合理的配慮」の必要性が明記されたことは一歩前進だが、「合理的配慮」は、学校等に「体 制 ・ 財政面で過度の負担を課さない」との配慮が付され、「多様な学びの場」として、「通常の学級、 通級による指導、特別支援学級、特別支援学校それぞれの環境整備の充実が必要」など、従来の枠組みに留まっている課題も残る。

16. メディア ・ リテラシー教育…2006・2007 年度文部科学省委嘱事業「教科書の改善・充実に関する研究事業」は、「教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語)」をまとめ、提言の1つが「メディア・リテラシー教育の教材を改善 ・ 充実させ る」「氾濫する情報の中から必要な情報を取捨選択し分析、加工して知識として活用していく能力はまさに国語教育の中で培うもの。映像や音声といっ た情報から読み取る力についても国語で教えるべき。現行の範囲を拡大し取り上げていく必要がある」としている。

17. ニート、フリーター、ひきこもり…2014年版 子ども・若者白書によると以下のとおり。 若年無業者:15~ 34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者の数は、2002年に大きく増加した後、おおむね横ばいで推移。2013年は60万人、前年より3万人減少。15~34歳人 口に占める割合は長期的にみると緩やかな上昇傾向にあり、2013年は2.2%。年齢階級別では、15 ~19歳9万人、20~24歳15万人、25~29歳 17 万人、30~ 34歳18万人。
フリーター:15~34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者のうち、①雇用者のうち勤め 先における呼称が「パート」か「アルバイト」で ある者、②完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者、③非労働力人 口で家事も通学もしていない「その他」の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態が
「パート・アルバイト」の者-の合計として集計すると、この数年はおおむね横ばいで推移、2013年 には182万人となった。年齢階級別では、15~ 24歳は減少傾向、25~ 34 歳の年長フリーター層は2009年以降増加傾向。フリーターの当該年齢 人口に占める割合は2008年を底に上昇傾向にあり、2013年は6.8%。特に、25 ~ 34歳の年長フリーター層では上昇が続いている。
ひきこもり:内閣府が2010年2月に実施した「若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)」によると、「ふだんは家にいるが、近所の コンビニなどには出かける」「自室からは出るが、 家からは出ない」「自室からほとんど出ない」に該 当 し た 者 (「 狭 義 の ひ き こ も り 」) は 23 . 6 万 人 、「 ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」(「準ひきこもり」)は46.0万人、 両方を合わせた広義のひきこもりは69.6万人と推計される。
ニー ト( 英:Not in Education, Employment or Training, NEET)とは、就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない状態を指した用語。ニート の概念が複雑で、フリーターとの区別等の関係で、 統計的に課題が指摘され、内閣府によるフリーター及びニートの推計調査は 2005 年『若年無業者に関する調査』を最後に実施していない。

18. 地域若者サポートステーション(愛称「サポステ」)…働くことに悩みを抱えている 15歳~ 39歳の若者に対し、キャリア・コンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への職場体験 などにより、就労に向けた支援を行う。サポステは、 厚生労働省が認定した全国の若者支援の実績やノウハウのある NPO 法人、株式会社などが実施して おり、2014年度は全国 160カ所に設置されている。  また、働くことについて悩みを抱えている若者 の自立のサポートを目的として作られた web サイ ト「ニートサポートネット」は、厚生労働省の委託事業として実施され、全国のサポステに関する情報をはじめ、サポステと連携関係にある全国のさまざまな若者支援機関について、検索・閲覧が できる。
 「日本再興戦略」改訂 2014(2014.06.24)では、 「未来を創る若者の雇用・育成のための総合的対策」として、「わかものハローワーク」「地域若者サポートステーション」等の地方や民間との連携の在り方を含む総合的な見直しにより、フリーター・ニー トの就労支援を充実させるとともに、正規雇用化等を進める-と明記されている。

19. ブラック企業...本来は、暴力団等、反社会的団 体とつながりを持つなどの違法行為が常態化している会社のことを意味する言葉だが、近年、社会的に大きな問題となっているのは、若者を大量に採用しながら、過重労働・違法労働によって、次々と離職に追い込み、企業としては成長する新興産業等のことをいう。厚生労働省は「若者の『使い 捨て』が疑われる企業等」に対し、2013年9月、 集中的に過重労働重点監督を実施、全体の82.0%に何らかの労働基準関係法令違反があり、是正勧 告がなされた。全国一斉の電話相談(2013.09.01) には、1042件の相談が寄せられている(主な相談 内容は①賃金不払い残業、②長時間過重労働、③ パワーハラスメント)。

20. 非正規雇用の現状…非正規雇用労働者は、1995~2005年に急増、以降現在まで緩やかに増加。特に15~24歳の若年層で、1990年代半 ばから2000年代初めにかけて大きく上昇。また、 雇用形態別にみると、近年、パート、契約社員・ 嘱託が増加している。2013年では、15~24 歳の32.3%、25~34歳では27.4%が非正規雇用。 正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(不本意非正規)の割合は、非正規雇用 労働者全体の19.2%、15~24歳では17.8%、25~34歳では30.3%(総務省・労働力調査等)。

21. 子ども若者育成支援推進法をめぐる現状…2009年「子ども若者育成支援推進法」が成立、その施行(2010年)をうけ、「青少年育成施策大綱」 に代わるものとして、「子ども・若者ビジョン~子ども・若者の成長を応援し、一人ひとりを包摂する 社会を目指して~」が策定された。2014 年 7 月には「子ども・若者育成支援推進大綱(「子ども・若 者ビジョン」の総点検の報告書)が取りまとめられ ている。「ニート、ひきこもり、不登校の子ども・ 若者への支援」としては、専門性や多職種によるアプローチ、支援の拠点としての地域若者サポート ステーションの更なる活用、個々の子ども・若者の 置かれた状況に応じた支援などが提言されている。  一方、自民党は「青少年健全育成基本法」の制 定を選挙公約(マニフェスト)に掲げている。「次代を担う青少年を健全に育成していくことが我が 国社会の将来の発展にとって不可欠の礎であるこ とに鑑み、青少年の健全な育成という観点から、 子ども・若者育成支援推進法について、題名の改正、 基本理念の見直し、保護者、国民及び事業者の責務の追加、施策の拡充等の措置を講ずる必要があ る」として、「子ども若者育成支援推進法・改正案」 を議員提案、日本国憲法も子どもの権利条約の理念も抜き取り、「若者の参加及び意見表明権」という文脈も完全に消し去った空疎なものにしている
(2014年6月に参議院で提案、審議未了)。

22. キャリア教育…改正教育基本法(2006.12)で は、第2条(教育の目標)の第2号に「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、 自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」が規定された。  中央教育審議会は「今後の学校におけるキャ リア教育・職業教育の在り方について」(答申)(2011.01.31)において、キャリア教育は「一人一 人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤とな る能力や態度を育てることを通して、キャリア発 達を促す教育」としている。  生活者ネットワークは「若者アンケート」を実施、「働く権利に関して知っているか、学校教育で 学んだか」の質問に対しては、労働時間、最低賃金、 男女雇用均等、各項目とも「知っている」との回答は全体の4割、学校教育で学んだとする回答は 少ない。

23. ワーク・ライフ・バランスの現状…2014 年度版「男女共同参画白書」によると以下のとおり (2013 年度の状況)。
年間就業日数が200日以上の就業者の週間就業時間:週 60 時間以上就業している者の割合は、性別では、就業形態を問わず女性より男性の方が高い。 また、就業形態別では、性別を問わず「自営業主」 で最も高く、「非正規の職員・従業員」で最も低い。 有業・有配偶男女の仕事時間及び家事関連時間(2011年):「仕事時間」は男性が 1 日当たりの平 均 36分、女性は390分。また「、家事関連時間」(家事、介護 ・ 看護、育児、買い物)は、男性が358分、 女性が530分。男性の家事活動に従事した者の割 合(女性比)は増加傾向だが、平均時間の女性比はほぼ横ばい。
男性の育児休業取得率:長期的には増加傾向にあるものの、2012年度は1.89%にとどまっている。 6 歳未満の子どもがいる世帯における有業の夫の、 短時間勤務制度や企業独自の制度を含む育児休業等制度の利用状況は、2012年10.6%。利用者の妻48.7%は無業者。また、妻が有業で育児休業 等制度を利用していない割合は、男性の育児休業等制度利用者の妻全体の12.2%。
介護・看護を理由とした離職者数:年によって変動があるが、男性に比べて女性が大幅に多い傾向 が続いている。男女とも、就業しながらの介護・看護、 あるいは将来的な就業復帰を希望する割合が高い。 雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合:男 性19.4%、女性53.9%(2013年)。

24. 成長戦略と女性の活用…安倍政権は、日本経済の再生に向け、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略という3つの政策を「3本の矢」として同時展開していくとしている。成長戦略=「日本再興戦略- JAPAN is BACK -」(2013.06)では「2020年に女性の就業率(25~ 44歳)を 73%(現状 68%)にする」と明記、「日本再興戦略」改訂 2014(2014.06) では「『2020年に指導的地位に占める女性の割合 30%』を達成するために、国、自治体、企業が果たすべき役割を定め、女性の活躍を促進することを目的とする『女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組み』を構築する」ことが掲げられ、合わせ て「女性の特性に応じた女性の健康の包括的支援」 も明記された。女性の人権、ジェンダー平等、リ プロダクティブ・ヘルス/ライツの視点が欠如し ている政権の法整備には、懸念の声が大きい。  「放課後児童クラブ」や「放課後子供教室」では「子育ての経験等を生かした女性の活躍の推進等に より、担い手を確保」とされ、「担い手確保」を優
先する短絡的な発想としても、人材育成・質の向 上の意味でも危惧される。

25. 家事ハラスメント...竹信三恵子さん(和光大 学現代人間学部教授)は「家事労働ハラスメント =家事労働を蔑視・軽視・排除する社会システム による嫌がらせ」と定義、こうした蔑視によって、 家事労働の担い手とされる女性が、貧困や生きづ らさへと追い込まれていくことを指摘している。 しかし、それを某企業広告が「妻からの家事ハラ」 として使用、「家事をやらされる男性のつらさ」を 指す言葉に転化させられてしまい、物議となった。

26. 女性の管理職…2014年度版「男女共同参画 白書」によると、管理的職業従事者数は、男性が1992年の239万人をピークに減少が続き、女性も1996年の22万人をピークに減少傾向にあるが、 男性よりも減少幅が小さいため、結果的に、管理的職業従事者における女性割合は増加傾向にある。  各自治体は、男女共同参画の計画を策定してい るので、年度報告等をたどっていけば、進捗状況な どを確認できる。例えば、多摩市(※ただし、市職 員係長職以上の女性比率)18.5%(2012年度実績)、 青梅市 5.4 %( 2 0 1 3 . 0 4 . 0 1 )、八王子市1 1 . 2 %( 2 0 1 2年度)、小平市 16.9%(2012.04.01)。東京都職員 に占める管理職の割合(2013年)は、参事(部長級)11.21%、副参事(課長級)20.9%(主事では、 課長補佐・係長級 29.8%、主任・その他 44.0%)。

27. 権利擁護のしくみ(現行制度)…市民後見推進事業:認知症や独居高齢者の増加に伴う成年後見制度の需要の増大に対応するため、 弁護士などの専門職のみでなく、市民を含めた後見人も後見等の業務を担えるよう、市区町村で市民後見人を確保できる体制を整備・強化し、地域 での市民後見人の活動を推進する取り組みを支援するもの。2011年度から実施。
市町村長申立:事例①親族がいない・不明(申立ができるのは4親等以内だが、2 親等内の親族の有無、意思を確認すれば足りる扱い)、②親族がいても、音信不通・申立拒否・虐待等で申し立てすることが不適当な場合。件数は年々増加、東京都は2011年度595件。
地域福祉権利擁護事業(福祉サービス利用援助事業):社協が実施。
成年後見人等に対する報酬助成:現行制度では、 成年後見人等の報酬や手続を利用するための費用 は本人負担、経済的に困窮している場合、利用は 難しい。制度の利用を促進するしくみ「成年後見 制度利用支援事業」や東京都の「成年後見活用あ んしん生活創造事業」には、報酬助成の規定もあるが、導入していない自治体も多く、導入しても要綱で対象を区市町村長申立に限定するなど、課題が指摘されている。

28. 社会的事業所…障がい者就労施策において、障がいのある人もない人も対等な立場でともに働くことを基本に、一般就労と福祉就労以外の第三の就労として提唱(共同連やワーカーズ・コレクティ ブ・ネットワーク・ジャパン等が提案している「社会的事業所促進法」では、障がい者に限定せず、 ひきこもり、薬物依存症者、刑余者、シングルマザー、外国人移住者など「就労困難者」としている)。 札幌市の「ソーシャルファーム」、箕面市の「障害者事業所」制度など、自治体により呼び方も異なる。
・三重県は、2014年度から社会的事業所に対する助成制度を創設するとともに、優先調達の対象とすることなどにより、社会的事業所の創業と安定的な運営を支援、障がい者の働く場を拡大している(社会的事業所創業支援モデル事業費補助金: 補助割合は県1/2、市町1/2、補助基準額は障がい者従業員人 50,000円、期間は創業当初の3年間)。
・滋賀県の「社会的事業所」制度は、障害者従業員を5 人以上 20人未満(かつ5 割以上)雇用している事業所が対象、運営費・管理費等を助成(上限:年間118万円/人)補助割合は県と市が1/2ずつ負担。
・箕面市の「障害者事業所」制度は、職業的重度障害者を4 人以上(かつ3 割以上)雇用している事業所が対象、障害者への支払賃金の3/4相当額を助成(上限:年間118万円/人)、援助者と 作業設備に対しても定額補助を支給。

29. 精神障がい者の地域移行…「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」 は、①将来像、 ②本人への支援、③病院の構造改革を柱に取りまとめを行った(2014.07.17)。「病院資源のグループホームとしての活用」について は、「本人の自由意思に基づく選択の自由を担保する」「外部との自由な交流等を確保しつつ、病院とは明確に区別された環境とする」「地域移行に向けたステップとしての支援とし、基本的な利用期間を設ける」等の要件が提示された。一方、特に当事者からは、あくまでも居住の場としての活用は否との強い意見が出ている。

30. 医療介護総合確保法…正式名称は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」。法律の柱は以下のとおり。①新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(消費税増収分を活用した新たな基金は、2014 年度の活用は医療分野のみ、介護分野は2015年度から)②地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(都道府県は、地域医療構想(ビジョン) を医療計画において策定する) ③地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護) を地域支援事業に移行し多様化/特養入所者を中・ 重度介護者に重点化/低所得者の保険料軽減拡充 /一定以上所得者の自己負担を2割に引き上げ/ 補足給付の要件に資産等を追加) ④その他(介護人材確保対策の検討:介護福祉士 の資格取得方法見直しの施行時期を2015年度から2016年度に延期)等

31. 暮らしの保健室…2011年7月から厚生労働省の「在宅医療連携拠点事業モデル事業」の助成を受け、(株)ケアーズの白十字訪問看護ステーションを母体に、新宿区の戸山ハイツにオープン。多職種連携のための6つの会議を継続開催(①牛込地 区在宅患者を考える会、②在宅療養シンポジウム、③在宅療養学習会④先進事例から学ぶ学習会、 ⑤多職種連携のためのケース勉強会、⑥個別ケー スにおける地域ケア会議)。終末期の緩和ケアだけでなく、がんのどの時期でも受けられる、「病院以外の相談支援の場」が求められている。また、行政の相談窓口は敷居が高くても、地域の居場所と してカフェ感覚でおしゃべりする中で、生活の困りごとに自分で気づく高齢者も多い。

32. 市民が構想する必要性…これまで非営利の市民事業等に支えられてきた地域福祉にも、今や多種多様な民間企業が参入、今後さらに加速、営利を目的としたシルバー産業による市場化で、ケアの質も懸念される。「日本再興戦略 改訂 2014」(2014.06.24 閣議決定)でも、「民間企業(コンビニ、飲食店等)による健康増進・生活支援・介護予防サービスの多機能拠点(総合相談、訪問・通所サービス、宅配・配食サービス、見守り等)を「街のワクワク(WAC WAC)プレイス」(仮称)として、 市町村にその情報を一元的に集約して住民に提供する仕組みを来年度中に構築する」と明記された(公的保険外のサービス産業の活性化の②として、 ヘルスケア産業を担う民間事業者等が創意工夫を発揮できる市場環境の整備)。

33. 地域包括支援センターにおける多職種協働…現行法で配置が規定されているのは3 職種(保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員)。現状でさえ、 専門職の確保が難しいなど、職員体制の課題が指摘されており、さらに今般の制度改正では、新たに包括的支援事業に「在宅医療・介護連携」や「生活支援サービスの体制整備」等の事業が位置づけられるなど、地域包括支援センターの機能強化が求められている。なお、地域包括支援センターに関する基準は2014年度末までに条例で市町村が 定めることとされている。職員の人員数及び人員 配置基準は「従うべき基準」、基本方針等は「参酌 すべき基準」(7/28全国介護保険担当課長会議)。 地域包括支援センターに直接、多職種の職員を配置することは困難でも、地域ケア会議の拡充で、 多職種協働(自治体職員、包括職員、ケアマネ ジャー、介護事業者、民生委員、OT、PT、ST、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士など)によるケアマネジメント支援、地域のネットワーク構築が期待できる。  また、静岡県富士宮市は、相談窓口を一元化、 受理段階で、多重債務や障がい福祉サービスの申請などは各相談窓口につなぎ、重層的、困難課題 のケースは、地域包括支援センターが直接対応してコーディネート、その後各専門機関等につなげている。

34. 在宅療養、在宅介護の後方支援…在宅ケアを支えるには、緊急時や家族へのレスパイトケア(介護の負担軽減・リフレッシュを図るため、一時的にケアを代理する)が必要だが、24時間迅速に対応、必要に応じて入院受け入れを行う医療機関や、
緊急時のショートステイはまだまだ不足。ショートステイには、介護老人福祉施設などに入所、食事や入浴のサービス提供や機能訓練を受ける「短期入所生活介護」と、医学的な管理のもとで介護サービスを受ける「短期入所療養介護」があり、 連続利用日数は30日まで。小規模多機能型居宅介護は、施設への「通い」を中心に、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組み合わせる。  日本ケアラー連盟は「介護者支援法案」を提案、 要綱案では、介護者の生活プラン作成や相談事業を行う「介護者支援センター」や、レスパイト施設などの整備を市町村に求め、国には介護者の実 態調査や、介護者手当の支給、就業機会の提供といった具体的な支援策を検討するよう求めている。

35. 学校給食の民間委託…狛江市は、「狛江市立小学校給食調理委託化の基本方針」(2013.05)に基づき、小学校給食調理の委託化を推進し、2014年度は、1校の給食調理を委託化。委託先選定にあたっては、民間事業者のプレゼンを実施、選定委員には、保護者も参加した。決まった業者のプレゼンは非常に内容がよかったとされている。今後も、委託先は、学校ごとに決めることになっている。 調理業務の民間委託の検討に際しては、保護者も参加し、価格だけでない、内容重視の評価ができるようにすべき。まして低価格の委託費は、調理に従事する人の労働環境にも影響する。

36. 農地を活用するしくみ…以下のような事例がある。
町田市「農地あっせん事業」:昔ながらの里山風景を守ると同時に、既存農家の規模拡大や新たに農業経営を始める方のために、市街化調整区域にあ る遊休農地を市があっせんする「農地利用集積円滑化事業」を実施。
国立市「くにたちはたけんぼ」の取り組み:畑+ 田んぼ+ハケ(崖線)で「はたけんぼ」。田んぼや畑を守り育てたい人がだれでも参加できる新しい形の農園として、イベントや援農への参加の他、 企業、NPO、市民サークルなどの団体へ畑を貸す、「農園運営ができる人材育成」を目的とした講座の開催などを実施。
世田谷区「農の風景育成地区」事業:制度は東京都が2011年に創設、農地や屋敷林などが比較的まとまって残る地区を指定、区市町と協力して農地等の保全を図るために都市計画制度などを積極 的に活用。第1号として世田谷区喜多見 4・5 丁目 が指定。 ソーラーシェアリング:農地の上空に太陽光パネ ルを設置する取り組み。農林水産省は支柱を立てて営農を継続するタイプの太陽光発電設備等について、農地転用許可の対象となるか否かを明らかにするため「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」をとりまとめた(2013.04.01)。

37 コミュニティ・ダイニング…以下のような事例がある。
豊島区「要町あさやけ子ども食堂」:子どもが1人でも入れる食堂。豊島子どもWAKUWAKU ネット ワーク(地域の子どもを地域で見守り育てるために設立)が、生活クラブ生協の食材を使用、毎月、 第 1・第 3 水曜日の 17:30 ~ 19:00、300 円で夕食を提供。
武蔵野市「だんらん給食」:学校と地域の人々との交流を深めることを目的に、だんらん給食(境南小学校)、敬老給食(第一小学校など)を実施。だ んらん給食は、保護者、地域でお世話になっている方、生産者などを招き、会食を通して子どもの 情操育成を目的に実施、子どもたちが雰囲気づくりや会食中の話題づくりなどを工夫し、楽しい会食会を通じてもてなすことの意味を学ぶ(武蔵野市の学校給食は、一般財団法人武蔵野市給食・食育振興財団が実施)。

38. 原発輸出...既に民主党政権下で方向性が明確にされた経緯がある。新成長戦略(2010年6月閣議決定)では、「環境・エネルギー技術の海外展開」 として「低炭素技術分野での世界シェア・トップ レベルを目指したプロジェクト構築支援等の官民連携体制の強化」、即ち「原発輸出を積極的に進める姿勢」が掲げられ、第179回国会(2011年10~12月)では、ベトナム、ヨルダン、ロシア、韓国との原子力協定が承認、原発輸出に向けた一歩 が踏み出されている。言うまでもなく、自民党政権でもこの方針に変更はなく、むしろ首相によるトップセールスは加速している。

39. 環境省と経産省による容リ法見直し合同会合…2006年改正時に、5年を目途に見直すと約束された容器包装リサイクル法であったが、2013年9月、 中央環境審議会循環型社会部会容器包装の3R推進に関する小委員会と、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会容器包装リサイクルワーキンググループの第1回の合同委員会が開催、容リ法の再改正に向けた審議がようやく始まった。2014年12月には取りまとめの予定。

40. 地域の実情にあったエネルギー施策…具体的には、省エネリノベーション(断熱効果を高めるガラスや壁材など)、HEMS(Home Energy Management System:電力使用量の可視化、節電や再生可能エネルギー・蓄電器の制御等による、 住宅向けエネルギー管理システム)などがある。 杉並区は「地域エネルギービジョン」(2013.06) の重点事項に「スマートコミュニティづくりの推進」(木造住宅が集まる地域の建替えに併せた、住 宅の省エネ化によるスマートコミュニティのモデ ル地域づくり)を位置づけている。

41. 都市計画道路第 4 次事業化計画…東京都の都市計画道路は、現在「第3次事業化計画」に基づき、優先整備すべき道路が挙げられ、事業が進められているが、区部 ・ 市部それぞれに策定されている計画は、どちらも2015年度まで、次期の10年間の第4次計画については、既に、区部 ・ 市部 それぞれで、策定のための検討体制が2013年の 秋頃からスタートしている。市民意見の反映が課 題だが、特に東京都は、計画の策定過程が閉鎖的であること、長期間未整備(未着手)の都市計画を見直すしくみがなきに等しい問題が背景にある(2000 年の分権改革時、国土交通省は改正都市計 画法に関する考え方を示す「都市計画運用指針」 を策定、道路に関する都市計画の見直し方針を明 示。東京都の周辺の自治体では見直しガイドライ ンを策定、多少なりとも見直しがされた)。

42. 災害対策基本法・防災計画の見直し…生活者ネットは、避難所運営への女性のリーダー配置、 防災会議などへの女性の参画拡大、防災計画における子どもの視点の必要性等を提案。東京都の「地域防災計画の修正」(2012.11)では「避難所管理運営の指針」や「災害時要援護者防災行動マニュ アルへの指針」改訂にあたり、女性の参画を推進 するとともに、災害時要援護者の視点等を踏まえ対応することが明記された。  国の「防災基本計画」では、2005年改定時に「男女のニーズの違い等男女双方の視点に十分配慮す べき事項」を規定、2008 年改定時には「男女共同参画の視点を取り入れた防災体制の確立」が規定、「災害対策基本法の改正」(2012年)では、地方防災会議の委員について自主防災組織を構成する者または学識経験のある者のうちから知事等が任命 できることになり、NPO、女性団体の代表者など が委員として追加される道が拡大した。「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針(2013.05) では、平常時からの男女共同参画の推進が防災・ 復興の基盤となること、「主体的な担い手」として 女性を位置づけることなどが基本的な考え方として提示された。

43. 生活困窮者自立支援法...生活困窮者対策と生活保護制度の見直しについて一体的に検討するため、 社会保障審議会に「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」が設置(部会長:宮本太郎・ 北海道大学大学院教授:当時)、2013年1月に報告書を公表。  法律は、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の支援を行うもの。2013年11月に成立、2015年4月1日施行。必須事業は、自立相談支援事業の 実施及び住居確保給付金の支給、任意事業は、① 就労準備支援事業、②一時生活支援事業、③家計相談支援事業、④学習支援事業、さらに都道府県知事等による就労訓練事業(「中間的就労」)の認定がある。費用は、▽自立相談支援事業、住居確保給付金:国庫負担 3/4、▽就労準備支援事業、一時生活支援事業:国庫補助 2/3、▽家計相談支援事業、学習支援事業その他生活困窮者の自立の促進に必要な事業:国庫補助 1/2。  「住居確保給付金」は、離職により住宅を失った 生活困窮者等に対し家賃相当の「住居確保給付金」(有期)を支給する。

44. 子どもの貧困率…厚生労働省が2014年7月 にまとめた「国民生活基礎調査」によると、等価可処分所得の中央値の半分の額に当たる「貧困線」
(2012年は122万円)に満たない世帯の割合を 示す「相対的貧困率」は 16.1%。これらの世帯で暮らす18歳未満の子どもを対象にした「子ども の貧困率」も 16.3%となり、ともに過去最悪を更新した。子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は 14.6%、そのうち大人が一人の世帯の相対的貧困 率が 50.8%と、大人が二人以上いる世帯に比べて 非常に高い水準、OECDによると、我が国の子どもの相対的貧困率は OECD 加盟国 34 か国中10番 目に高く、子どもがいる現役世帯のうち大人が一 人の世帯の相対的貧困率は OECD 加盟国中最も高い。つまり、ひとり親家庭など大人一人で子どもを養育している家庭が特に経済的に困窮している実態が明確になっている。

45. 子どもの貧困対策…国は子どもの将来がその生まれ育った環境により左右されることのないよう、子どもの貧困対策を総合的に推進するため「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を制定 (2013.06 成立、2014.01 施行)。実効性への疑問と、対策の遅れが指摘されていたが、ようやく「子ど もの貧困対策に関する検討会」を 2014年4 月に立ち上げ、4 回の会議を経て「子供の貧困対策に関する大綱」を策定、2014年 8 月29日に閣議決定した。大綱では、子どもの貧困に関する指標として、生活保護世帯に属する子どもの高等学校等 進学率、スクールソーシャルワーカーの配置人数、 ひとり親家庭の親の就業率、子どもの貧困率など、 25の指標を立て、当面の重点施策として、教育支援、生活支援、保護者に対する就労支援、経済的支援、子どもの貧困に関する調査研究、施策の推進体制等を掲げている。

46 奨学金の現状…諸外国では奨学金の相当部分が 給付型であるのに対し、我が国の奨学金のほとんどは貸与型である。さらに、国立大学でも初年度 納付金標準額が 81 万 7800円など、教育費が高額であること、不況により、大学を卒業しても安定した職業に就けず低賃金との理由で、奨学金の返済が滞るケースが増大している。日本学生支援機構 などの徹底した回収強化策により、奨学金を返したくても返せない人が、経済的にも、精神的にも追い詰められている現状が社会問題となり、「奨学金被害」をなくそうと、弁護士、司法書士、教員らを 中心に奨学金問題対策全国会議が設立している。

47. 議会における男女平等、クオータ制度…日本の女性議員の割合は、国会議員が特に低く8%、地 方議会は国政よりは高いが、2013年12 月現在、 女性議員の割合が最も高い特別区議会で25.9%、 政令指定都市の市議会16.5%、市議会全体では13.1%、都道府県議会8.8%、町村議会8.7%。  第3次男女共同参画基本計画(2010.12.17 閣議 決定)では「今後取り組むべき喫緊の課題」のひとつ「ポジティブ ・ アクション」に「クオータ制度」 が盛り込まれた。「社会のあらゆる分野において、 2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、 少なくとも 30%程度になるよう期待する」という 目標(2010.06.20 男女共同参画推進本部決定)の 達成に向けて、取組の強化・加速が不可欠である」 とし、ポジティブ・アクションの手法として、ク オータ制(割当制)やインセンティブ付与、ゴール・ アンド・タイムテーブル方式などを提示している。  政治分野におけるポジティブ・アクションの諸外国の事例は、1議席のうち一定数を女性に割り 当てることを憲法や法律において定める「議席割当制」(Reserved seats)、2議員の候補者名簿の 一定割合を女性が占めるようにすることを憲法や法律において定める候補者クオータ制(Legislated Candidate Quotas)、3政党が党の規則等により議員候補者の一定割合を女性とすることを定める、政党による自発的なクオータ制(Voluntary Political Party Quotas)に分類される。87カ国が 何らかのクオータ制を導入、2及び3に適合的な比例代表制は、女性国会議員の割合が高い上位15カ国のうち14カ国で導入されている(2011年3月末現在)。日本の国政における女性議員の割合 8%は、世界平均の 22.2%を大きく下回り、189カ国中127 位とされる。  一方、議会内のしくみでは「産休・育休」制度 が議論になる。2007 年設置の「都議会の在り方検討委員会」で、ネットは男女平等施策を推進して いくため、都議会議員の「産休・育休制度」を提案、 議会内部の同意を拡大させた。育休制度は今後の課題とされたが、「産休制度」については議会で規則※が改正、都道府県レベルでの実現は、群馬県 に続き2番目。(※都議会会議規則:第 11 条(欠 席の届出) 議員が疾病、出産その他の事故のため 出席できないときは、その理由を付けて、当日の 開議時刻前に、議長に届出なければならない。)  議会では、欠席しても理由を問わず報酬は支給されるが、出産により議会を休むことへのバッシ ングが問題。労基法が適用しない議会における「産休」制度の導入は、欠席事由に「出産」を明記することで、議会内や市民への認知・理解につなげ ることと言える。  北欧諸国の国会などでは、産休・育休制度が父母ともにしっかりと認められ、代理議員、代理投票、 ペアリングなどの制度もある。

48. 議員と行政の執行機関…二元代表制による議事機関としての議会と市長等執行機関との関係を明確に分け、それぞれの場における審議の活性化を図るため、議員が執行機関の諮問的な性格を持つ附属機関のメンバーにならないようにする傾向は、議会 改革の観点からも少しずつ広がっている。京丹後市や周南市など、規定を設けている議会もあり、決議を行って運用に反映させている議会もある。

49. 積極的平和主義...もともと平和学では戦争のない状態の「消極的平和(Negative Peace)」に対し、 貧困、抑圧、差別などの構造的暴力がない状態を「積 極的平和(Positive Peace)」としている(ノルウェー の平和学者ヨハン・ガルトゥング氏)。一方、安倍首相は米国でのスピーチで「積極的平和主義」を Proactive Contributor to Peace と言っており、これは和訳では「率先して平和に貢献する存在」だが、 平和学の研究者は、Proactive は軍事用語では「積極的平和」= Positive Peace の意味ではなく、『先 制攻撃』のニュアンスで受け取られると指摘する。

50. 国連人種差別撤廃委員会...日本政府に対して、人種差別を禁止する包括的な特別法(直接的および間接的な人種差別の禁止、被害者救済)を制定するよう勧告した(2014.08.29 日本の第 7 回~ 9 回定期報告に関する調査最終見解)。  一方で、ヘイトスピーチ規制に乗じて国会周辺デモも規制しようとする動きもある。上記の国連勧告 でも、法規制を求めると同時に、ヘイトスピーチ規制が、それらに対する「抗議の表明を抑制する口実として使われてはならない」と指摘している。さいたま市公民館では、発行する月報に「憲法9条」 の俳句の掲載を拒否(2014.06)、調布市では「調布九条の会」の創立記念イベントに後援しないことを決定(2014.09)など、正当な表現までをも規制するような、非常に懸念される事態もおきている。