流動的な政治の流れとネットの存在意義―小池劇場をどう見るか―

2017年8月28日 15時51分 | カテゴリー: ステートメント, トピックス, 活動報告

8月26日東京・生活者ネットワークにおいて、中北浩爾一橋大学教授にお話を聞いた。

プロフィール:1968年三重県生まれ。91年東京大学法学部卒業。95年同大大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。東京大学博士(法学)。大阪市立大学助教授、立教大学教授などを経て2011年より現職。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。著書に『現代日本の政党デモクラシー』(岩波新書)、『自民党政治の変容』(NHKブックス)、編著に『民主党政権とは何だったのか』(岩波書店)などがある。

■自民党の強さとは何か?

自民党の岩盤のような強さは、安倍首相のリーダーシップのもと、与党勢力の結束、首相官邸のトップダウンと自民党と公明党の結束の強さ、野党勢力に比べて有権者の支持を集めていることにある。安倍政権の国政選挙における4連勝は支持基盤が強いことで、自民党の絶対的得票率は低いままを推移しているが、投票率が低くても勝利している。もう一つの要因は民進党政権に対する有権者の失望や消極的支持にある。一方、投票率も低く、支持なし層が増えている現実は政治への失望、不信、無関心が拡がっていることが言える。しかしながら、依然として自民党の支持基盤は分厚く、特に地方議会において自民党議員が50%を占めていることはその強さは維持されている。自民党の弱体化は進んでいるものの、公明党との候補者調整・相互支援などの選挙協力が完璧に近い形ができているため、選挙協力が難しい民進党、共産党とは歴然とした差があり、そのことが選挙結果にあらわれている。

■小池劇場とは何か?

自民党が都議選で負けたのは①公明党と都民ファーストとの選挙協力②東京の支持基盤は脆弱化しているところで無党派層が自民党にNOを出したことが原因といえる。都民ファーストが受け皿になったのは元自民党という安心感(第2自民党)が自民・公明を取り込み、小池劇場=ポピュリズムで無党派層の支持が獲得できた。小池知事は大衆の味方として戦う「カリスマ型リーダー」として登場。ただし、国政進出は難しいだろう。

■2つの地域政党

ネットと都民ファーストでは反エリート主義という基本的価値は一致するが、それ以外では☓

1970~80年代に「新しい社会運動」として市民の参加と自治の場として地方政治に軸を置き、そのために地方分権・情報公開をすすめ、草の根の市民による直接民主主義としてネットワーク型政党が登場。これが生活者ネットワークの原型といえる。しかし、近年市民の政治参加が衰退してきている。

■東京ネットの現状

1980年代から現在までの議員数の推移、生活者ネットを取り巻く背景の変化への対応、ネットの従来の政治手法が時代に合っているのか、都政などの大きな単位でのメディアを通じた発信力などについて示唆に富むお話をいただいた。

■都民ファーストとどう付き合うか

都民ファーストはポピュリストであり、第2自民党であることは確かであるが、「自民」対「反自民」になった都議選で都民ファーストが徹底した反自民のスタンスであるなら、政策協定する理由があった。また、貴重な都議会の議席を守るという組織防衛上も協力・推薦関係はありうる選択だっただろう。ただし、都民ファーストに対する政治判断の説明や積極的にアピールできたかという点で問題は残った。今後は都民ファーストとの協力を固定的にとらえすぎず、距離感を持つことも必要だろう。

このような時に政治学者の丸山眞男氏の「政治的リアリズム」を用いる。理想や理念を振りかざすだけはダメ。現状を追随するだけでもダメ。理想を持ちながら、現実の中でどう変えていくのかという思考が必要だろう。今後の都民ファーストとの協力を固定的にとらえず、距離感を持つことも必要だ。

最後に、国政の野党共闘を機械的に地方政治に押し付ける弊害もあるという。国政と地域政治が連動していることは理解するが、冷静に考えるべきではないか。

以上、日本政治の現在と生活者ネットという視点でお話をいただいた。東京・生活者ネットワークが結成されてから、来年は30年の節目となる。改めて、流動化する政治情勢の中でも市民の声を確実に届ける「市民の議席」を確保していくために何が必要になるのか、何が求められるのか、考えていきたい。