「多様な学び保障法」を実現し、子どもと若者に個別・最善の学びを保障する社会に

2.28「多様な学び保障法」学習と意見交換会から

主催:ソーシャル・ジャスティス基金・アドボカシーカフェ(*)

 今、いわゆる不登校の子どもたちは17万人を超えて存在している。こうした実態があるなか、いじめ、体罰などを背景に、学校で命を失う子どもたちが後を絶たない。命をかけてまでも休めない、外れることができない学校=教育制度とは…という切迫した問いが、子ども自身から大人社会に投げかけられている。

基調報告を受けてテーブルごとに意見交換し、それぞれのグループが議論を発表した。発言する、東京・生活者ネットワーク政策委員で杉並区議会議員の小松久子

その一方で、フリースクール、デモクラティックスクール、外国人学校、インターナショナルスクール、ホームエデュケーションなど既存の学校以外の様々な場で学び、成長する子どもたちも存在する。しかし、強固な教育制度のもと、これら学校外の学びが法律で認められていないため、法的・社会的な位置づけは著しく不十分で、公費によって支えられることはない。

「多様な学び保障法を実現する会」共同代表でフリースクール全国ネットワーク代表理事の奥地圭子さん

この現状を解決にむけようと、2012年7月8日「多様な学び保障法を実現する会」(以下:実現する会)が発足(共同代表:汐見稔幸白梅学園大学教授 喜多明人早稲田大学教授/子どもの権利条約ネットワーク 奥地圭子東京シューレ理事長/フリースクール全国ネットワーク)。多様な状況を生きる子どもたちが、安心して育ち、自他を尊重し、個性を伸ばし、幸せに成長できる社会を実現するために、また、運動の広がり・うねりをつくっていくことを目的に、オルタナティブ教育を実践する団体や個人、一般の市民、研究者や識者、議員など多くの市民がつながり、<既存の学校に通う以外の、多様な子どもの学びの在り方、育ち方を公的に認め、支援する『多様な学び保障法』の実現>をめざすもので、法律案は骨子ができあがり、今後社会で広く議論を重ねていく段階に来ている。

 

「多様な教育を推進するためのネットワーク」の古山明男さんも対話に加わった

2月28日には、四谷区民センター を会場に、新しい法律案「多様な学び保障法」について議論する公開の場<アドボカシーカフェ>が設定された。この日のメインゲストは、実現する会共同代表でフリースクール・東京シューレ理事長の奥地圭子さんと、この提案に国会議員の立場で関わっている鈴木寛参議院議員。ウィークデーにもかかわらず、首都圏を中心に市民約80人が参加。オルタナティブ教育を実践する現場のサポーターや子どもが学校に行けないでいる保護者、教職過程にある学生など若い世代のほか、生活者ネットワークのメンバーらも多数参加。複数の視点から議論を行い、「これからの学びの姿」を考えていく場となった。

東京・生活者ネットワークは、「多様な学び保障法」の実現にむけて、ともに活動を進めます。

 ■新法のめざすもの――奥地 圭子さんの基調報告から

・子どもが生きることと学ぶこととは一つのこと。これを基本に、子どもにとって生きにくい制度になっている学校制度を変えたい。そもそも学びの権利は、憲法の基本的人権であるが、しかし、現在の教育基本法に基づく普通教育では、学びの場が学校に限られている。教育基本法の下に、学校教育法と並列に「多様な学び保障法」を制定することで、フリースクールなどの学びの場が学校教育と同様の保障が認められるようにしたい。

・まず、子どもの命を救う。いじめる側にいる子どもたちも苦しいし、悲鳴をあげている。学校に行かなくてはならないという強固な枠を外し、いじめの現場から「逃げていい、休んでいい」と言ってあげたい。そこから始めなくては「学校自殺」は止まらない。

・実現する会の目的は、既存の“学校”に行かない選択をした子どもを支援する「多様な学び保障法」制によって、様々な学びの機関を子どもや親が選べる権利を保障することにある。公費で保障され、学校教育との相互の乗り換え選択の自由、進学や進路選択で不利益をこうむらない保障をめざすものであり、多様な学びの場での教育も、親の就学義務を果たすものとする。

東京・生活者ネットワーク政策委員/杉並区議の小松久子(左)と奥地圭子さん

 ■立法の必然と筋道――鈴木寛さんの基調報告から

・諸外国におけるコミュニティ・スクールなど学校外の学びの場の必要性について、早くから発言してきた鈴木議員は、新法案がめざす多様な学びの場での教育は、従来の学校教育法に基づく学校の代替(=オルタナティブ)ではないことを認識すべきであることから、2012年10月、「子どもの多様な学びの機会を保障する法律」と法案名の変更を、実現する会に提案。

・近代システムは、物質的な生産能力を最大化するための社会システムであり、近代学校教育は、それを支える人間を産み出してはきたが、しかし今、直観力のある子どもたちが、その「近代システム」への違和感を体現し始めた。不登校の子どもの学習権を保障しなければならない。学校に行かない選択をした子どもの、その子にとってのベストの学びがきちんと保障され、守られるしくみづくりが急がれる。

・そもそも「学習権」は、大人が教え込む「教育」ではなく、自発的な学びを保障される権利である。すべての子どもと若者に、いかに個別・最善の学びを保障・支援していくかが基本でなければならない。

 *この日の学習と意見交換会<アドボカシーカフェ>は、「多様な学び保障法を実現する会」と、同会が発行する「子どもの多様な学びの機会を保障する法律」の意義や法案骨子などがわかるパンフレットの、作製費助成元「ソーシャルジャスティス基金(SJF」との協同で開催された。SJFは、普通の市民とNPOがともに社会を良い方向に変革していくことを目的にした市民ファンドで、「社会正義の実現」を目的に、税優遇を活用しながらサポーターや寄付を集め、それを財源に「社会正義の実現」に求められる市民活動へ助成。同時にそれを実現するために必要な議論やアピールの場を提供している。

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