八ツ場ダム再開決定

マニフェスト「コンクリートから人へ」に期待した国民の意思は無視された

 民主党は09年の衆院選で「国民生活が第一」「無駄な公共事業の廃止」を掲げ、多くの国民の共感を得て、政権交代を実現した。八ツ場ダム中止はその象徴だった。政権交代直後、鳩山政権のもとで当時の前原国交相が建設中止を宣言した。これに関連自治体が反発し、2010年10月から検証作業が始まった。本来ならこの時点で、これまで有識者、市民団体から指摘されてきた水需要の予測や斜面の安全性などがきちんと検証されるべきだったが、検証作業では想定する洪水に対して「どの案が安上がりか」を比較。「八ツ場ダム有利」という報告案を出した検証の中身は、八ツ場ダムの残事業費と、ダム以外の代替え案の事業費を比較するというものだが、この2年間、ダム本体以外の道路・鉄道などの周辺工事は着々と進められており、「残」事業費は減る一方だった。生活者ネットワークはこれまで、多摩地区で安定的に使用され、水質も優れた地下水40万㎥/日を保有水源としてカウントするよう主張してきており、大河原雅子参議院議員も国会で質したが、認められなかった。
「政治主導」を掲げながら、河川整備の在り方の哲学もなく、結局は官僚に押し切られた民主党政権に政権担当能力があるのか、怒りを覚える。さらに東京外郭環状道路(外環)の建設工事を再開する方針を固め、整備新幹線の未着工区間の着工認可に向けて動き出している。無駄な公共事業を復活させたうえで、「子ども手当」は名前を変えて減額し、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加や消費税増税では、「国民の生活が第一」は破たんしている。到底国民の理解は得られない。

東京・生活者ネットワーク
代表委員 池座俊子

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