国立市で続く「体験水田」の価値

地産地消・環境保全・防災にも役立つ都市農地を保全する

 今年も余すところあと6日、お正月用の餅やしめ縄づくりが各地でおこなわれています。

 東京西部の多摩地域に位置する文教都市・国立のもうひとつの価値は、南面のハケに沿って湧水や水田があること。
 毎年、市内全小学5年生が春の田植えと秋の稲刈りを体験、水田に足を入れます。教育委員会が農業委員の協力を得て実施するもので、今年で13年目を迎えました。
 子どもたちは「体験水田」を通して第一次産業である農業を社会科で学び、総合学習で「食」についての学習を深めます。さらに、地域に伝えられてきた暮らし方、守られてきた自然の姿に直に触れる貴重な機会ともなっています。

 しかし、今後この場所も土地区画整理事業に伴い、土地整備と道路工事、水路の暗渠化などがすすめられます。体験水田も今年限りでは…と、不安の声が高まりました。
 国立市の農地面積はこの5年間で5%も減り8.5%となっており、2003年から始まった生産緑地の追加指定や、体験農園とすることで相続税の納税猶予が適用されるよう促すなどの対策も、農地の減少に歯止めをかける大きな動きにはなっていません。

 一方で、国立・生活者ネットワークは、これまでも、つくり手の見える安全性の高い都市農業をあらゆる機会に提唱。地元野菜の学校給食への導入も徐々に増えており、農家と学校間の流通を引き受けるNPOの存在も大きな力となっています。
 今年(08年)は、「有機農業推進モデル事業」も始まり、農業塾卒業生や市民らで雑穀・豆類を栽培し、加工する市内循環のしくみづくりをめざしています。
 生活者ネットは、区画整理事業下にある体験水田についても、関連団体と連携をとりつつ、議会毎に継続の必要性を提案。どうにか継続への見通しがついて、いまホッとしているところです。

 東京・生活者ネットワークが、2009年東京政策で掲げる「都市農業推進条例」の制定と、法制化を根拠に農家の経営スタイルの多様化や、市民の農に関わる選択肢を広げていく提案に、地域から大きな期待が寄せられています。
 各地で“地産地消のまちづくり”への機運を高め、未来を見据えた農地保全と、農を介した豊かな地域おこしをすすめていきたいと思っています。

東京・生活者ネットワー運営委員
国立・生活者ネットワーク
国立市議会議員 小川宏美

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