子どもの権利条例東京市民フォーラムのつどい開催

ミュージカルと講演・対談で考える『子どもにやさしいまちづくり

 「子どもの権利条例東京市民フォーラムのつどい」が10月15日、同フォーラム実行委員会(代表・喜多明人早稲田大学教授)の主催で、東洋大学スカイホールを会場に開催された。生活者ネットワークもその設立時から実行委員として参加、今回で第6回となった。
 フォーラムでは、国連子どもの権利条約の普及と実施の促進、国際的なネットワークづくりをすすめるユニセフ・イノチェンティ研究所からトロンド・ヴォーゲさん(同研究員・前ノルウェーオンブズマン)を招き、ユニセフが提唱する「子どもにやさしいまちづくり」のありようを共有した。(写真右上)
 国際社会が急速な変容と都市化に見舞われ、地方分権が進む中で、市町村の重要性が高まっていることからも、条約を地域、自治体から実施していくことが切に求められている。
 今、日本の子どもたちは不登校やいじめ、事故や学校災害など多くの問題を抱えており、虐待、体罰、誘拐殺傷事件などおとなからの人権侵害も後を絶たない。子どもたちの安心して生きる権利が侵害されており、自らの権利を自らが守る力を蓄えていくような権利学習の機会も失われているのが実情だ。基礎自治体の課題に対応して子どもの権利を実現することは、子どもたちの生活を今、向上させ、現在と未来のコミュニティをよりよい方向に変えていくことであり、持続可能なまちづくりへの投資でもある。
 
 西東京市の坂口光治市長、同子ども福祉審議会会長の森田明美さん(東洋大学教授)からは、行政の縦割りを極力排除した方向で計画している子ども家庭支援ネットワークなど、「子どもにやさしいまちづくり」が紹介され、子ども総合支援センターには子どものためのシェルターも用意されることなどが報告された。(写真右中)

 フリーディスカッションでは、トロンドさんも交え、子どもの権利実現のための活動を広げている学生、市民、NGO/NPO、行政職員、研究者、議員が意見交換。トロンドさんは、「子どもの権利を守ることに熱意を傾ける地方自治制度を築くには、子ども支援の施策・事業の促進を図ることが“支出”ではなく“投資”であることを了解する政治家、首長を生み出すことが必要で、市民の力が大きく問われる」と発言。
 あらためて東京から子どもの現状を直視し、子どもを支えていくために欠かせない子ども施策、子どもの権利保障や救済のあり方、これを支える条例の方向性などについて真摯に語り合い、今後の活動展開を約した一日となった。

<下の写真>
 集会の第一部では、NGO・DAWN(ドーン)*劇団「あけぼの」によるミュージカル「ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレンの物語」が上演された。
 今回の来日を楽しみに練習に励んできたのはマニラ在住の8〜16歳の子どもたち8人。ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(日本人の父親とフィリピン人女性との間に生まれた子どもたち)は現在数万人とも数十万人ともいわれ、その母親の多くは、かつてエンターティナーとして日本に出稼ぎにきていたフィリピン人女性たちだ。子どもたちの多くが父親に見捨てられたという精神的ダメージを受けていたり、十分な教育を受けることができない、幼い頃から家計を支えるために働かなければならないなどの問題を抱えている。ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレンの10年の軌跡を綴った公演は、当事者である子どもが参加し、発言することで、子どもたち自身が自己回復するワークショップでもある。
 優しさと強さをあわせ持った子どもたちとのひとときは、「子どもにやさしいまちづくり」をともに考えるフォーラムの開幕を告げるに相応しいものであった。フォーラム参加者からは自発的なカンパと多くの励ましの言葉が寄せられた。

*フィリピンに帰国した女性の多くが、日本人の父親から認知を受けていない子どもを抱え、精神的、経済的な壁に阻まれ困窮し、自分の力だけでは問題を解決できないでいる。1996年2月に活動を開始した国際非政府機構DAWNは、子どもの父親探し、教育費援助、女性の自立生計支援、女性や子どもたちのメンタル支援、移住労働者の問題や権利を国境を超えて多くの人に知ってもらう活動などを行っている。劇団「あけぼの」もこうした活動の中で誕生した。

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