朝鮮半島38度線非武装地帯(DMZ)を行く

北東アジアの平和を考える

“DMZ平和生命公園”事業をすすめる韓国の市民団体の尽力で実現したツアーに、生活者ネットから藤田愛子(前都議)も参加。
 この事業は、分断のため人が入れなくなった土地の生態を保存研究し、平和教育と思索の場を作るというものです。以下、藤田愛子の報告です。

 朝鮮の南北を38度線が分断していることはもちろんのこと知っている。しかしその両側2キロメートルが非武装地帯(Demilitarized Zone:DMZ)として四半世紀以上の間ほぼ手つかず状態の地域があることは知らなかった。実際に足を踏み入れ、冷戦が終了している世界において置いてけぼりになっている両国の現実を知った。
 海兵隊や陸軍の検問はあるが、民統線の内部でありながらも遊園地化している西部地域、兵隊の監視下原則カメラ禁止で見学した東部地域−まさに停戦というよりは一時休戦という両国民にとって同一民族だけに厳しい現実がそこにあった。
 車や人が通るくらいの道幅は地雷が撤去されているが、その外側は今も地雷処理ができておらず侵入が禁止されている。
 今回招聘いただいた韓国の市民団体は、江原(カンウォン)道と麟蹄(インジェ)郡・瑞和(ソファ)の民間人出入統制線(民統線)内外30万坪に、この非武装地帯(DMZ)付近の地雷地帯を、自然探検コース「平和生命園」を建設することを実現した人たちである。ただただ重い現実があり、「何を私たちに求めたいのだろうか」、「私たちはこの現実を知って何ができるのだろうか」。4泊5日ずっとそれだけを考えた旅だった。
 最後に参加者一同で共同声明を発表し韓国メディアに発信した。以下は宣言文。

<平和な東アジアをつくる日韓市民のDMZ共同宣言>
 私たち日韓市民は2006年9月2日から9月6日までの5日間、江華島(カンファド)にはじまって、金浦(キンポ)、坡州(パジュ)、鉄原(チョルウォン)、華川(ファチョン)、楊口(ヤング)、麟蹄(インジェ)、高城(コソン)の非武装地帯(DMZ)を踏査した。朝鮮半島の分断に至った歴史と、分断がもたらした各種の悲劇的問題をともに学ぶことに努めた。メンバーの間には、それぞれの生い立ちなどによってDMZとどう向き合うかに大きな違いがある。しかし、この冷戦の傷跡が今後長く続くことのないようにと願う点で一致している。この共通の思いをもとに、東アジア、さらに世界全体に一日も早く平和と安定がもたらされることを願って、以下を宣言する。
・ 東アジア、とりわけ日本、中国、朝鮮半島で、歪んだ民族主義が広がっていくことに強く反対する。
・ あらゆる地域、あらゆる国家の核兵器に反対し、この地域で戦争が決して起こることのないよう努力する。
・ 次世代の市民である日韓の青少年たちが、正しい相互理解と友情を培っていくよう、具体的に支援する。
・ 日韓市民社会が、誤解や相互不信を脱却し、平和を愛する市民社会の力をあつめて、平和を成し遂げるために積極的に連帯する。
・ DMZに象徴される分断と対立を超えて、平和はもちろん、自由、人権、環境保全、貧富格差の解消、物質的な豊かさを超えた生活を、私たちの共通の価値とし、東アジア全体の市民社会で実現する。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次